Perps funding rate とは|誰が払う人気バランス料

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Perps funding rate とは|誰が払う人気バランス料
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    本記事は技術解説であり、投資・税務・法務助言ではありません。判断は専門家にご相談ください。

    「自社で保有している暗号資産の価格変動リスクをヘッジしたい」「機関顧客向けに先物プロダクトを組みたい」——この場面で必ず登場するのが Perpetual(永久先物) と、その核心メカニズムである funding rate。本記事は事業者目線で整理する。


    目次

    1. なぜ事業者がこれを理解する必要があるのか
    2. Perpetual(永久先物)とは — 期日のない先物
    3. funding rate — 「人気バランス料」と読む
    4. funding rate はどう計算されるか — プレミアム/ディスカウントの中身
    5. funding rate が事業者にとって何を意味するか
    6. 長期ショート/ロングのコスト計算
    7. 主要 Perps プロトコルの funding 設計の違い
    8. funding rate が極端化する局面と事業者の注意点
    9. funding rate を「利回り源」にする — market-neutral 戦略
    10. 自社在庫ヘッジの3つの戦略
    11. 開発期間とコスト、日本の規制論点
    12. まとめ

    1. なぜ事業者がこれを理解する必要があるのか

    事業者が Perps を扱う典型シーン:

    • 自社暗号資産在庫のヘッジ: 例えば ETH を1,000枚保有している事業者が、価格下落をヘッジしたい
    • 機関顧客向け先物プロダクト: 機関カストディアンが「価格固定の暗号資産運用」を顧客に提供
    • 裁定取引: スポット vs Perps の funding rate 差を取る運用(Flash Loan を使った裁定の実装例も参照)
    • 利回り商品の設計: funding rate を「コスト」ではなく「収益源」として取り込み、合成ドルやデルタニュートラル運用商品を組成する

    これらいずれも funding rate の理解が前提だ。

    なぜ「理解が前提」なのか。funding rate は 0.01% といった一見小さな数字が、年率換算では数十%にも膨らむ 性質を持つ。スポット価格の変動だけに目を向けて Perps を使うと、知らぬ間に「ポジションを持っているだけで毎日溶けていくコスト」を背負うことになる。逆に、設計次第ではこの funding rate そのものが安定した利回り源にもなる。つまり funding rate は、Perps を扱う事業の損益を左右する“もう一つの価格” であり、本記事ではこの一点を徹底的に噛み砕く。

    用語補足
    - ロング(Long): 値上がりに賭ける「買い持ち」ポジション。
    - ショート(Short): 値下がりに賭ける「売り持ち」ポジション。手元に資産がなくても「売る」ところから入れる。
    - デルタニュートラル: 価格が上がっても下がっても損益がほぼゼロになるよう、買いと売りを同量で組み合わせた状態。在庫ヘッジの基本形。


    2. Perpetual(永久先物)とは — 期日のない先物

    伝統金融の先物との違い

    伝統金融の先物(CME の WTI 原油先物等)には 「満期日(限月)」 がある。期日が来ると清算され、新しい限月の先物に乗り換える(ロールオーバー)。これにロールコストが発生する。

    Perpetual は 「満期日がない」 永久の先物。期日清算がない代わりに、funding rate という仕組みで「現在価格(スポット)と先物価格のズレ」を補正する。

    なぜ「永久」が可能か

    満期がないなら、先物価格がスポット価格から永遠にズレてしまうのではないか——それを防ぐのが funding rate だ。次節で説明する。


    3. funding rate — 「人気バランス料」と読む

    仕組み

    funding rate は「ロング(買い)とショート(売り)の人気の偏りを調整する手数料」だ。

    • ロングが多すぎる(みんな値上がりに賭けている)→ funding rate がプラス → ロング保有者がショート保有者に手数料を支払う
    • ショートが多すぎる → funding rate がマイナス → ショート保有者がロング保有者に手数料を支払う

    支払いは「8時間ごと」「1時間ごと」など定期的に発生し、ポジションを持っている間ずっと続く。

    直感的な意味

    「人気のあるポジションを取る側に課金して、不人気な側を補助する」設計。これにより「Perps 価格がスポット価格から離れすぎないようバランスが取れる」。

    ここで重要なのは、funding は取引所(プロトコル)の手数料ではなく、トレーダー同士のやり取り だという点だ。ロングが払った funding はそのままショートが受け取る。プロトコルは原則として中間で抜かない(清算・取引手数料は別建て)。だからこそ funding は「市場の人気投票の結果を、お金の流れで表現したもの」と読める。

    funding の向きを一枚で覚える

    市場の状態 Perps 価格 vs スポット funding rate の符号 払う側 → 受け取る側
    ロングが過熱(強気) Perps がスポットより高い(プレミアム) プラス(+) ロング → ショート
    ショートが過熱(弱気) Perps がスポットより低い(ディスカウント) マイナス(−) ショート → ロング
    均衡 ほぼ一致 ほぼ 0 受け渡しほぼなし

    覚え方は「過熱している側が、冷めている側に払う」。値上がりにみんなが群がればロングが払い、悲観が広がればショートが払う。

    数値の感覚

    • 通常時: funding rate ±0.01〜0.05% / 8時間(年率換算で概ね ±10〜50%)
    • 過熱時: funding rate ±0.1% / 8時間以上(年率換算で ±100% 超になることもある)

    ※ 年率換算は「8時間 funding × 1日3回 × 365日」での単純換算であり、実際の funding は時々刻々と変わるため、あくまで「感覚をつかむための目安」と捉えてほしい。

    ロング 1ETH($3,000)を1年保有して funding rate +0.05%/8h を支払い続けると、概算で年間 約$1,600 規模のコスト。これが「永久先物の隠れたコスト」だ。


    4. funding rate はどう計算されるか — プレミアム/ディスカウントの中身

    「人気バランス料」という直感をもう一段だけ分解する。funding rate がどんな部品からできているかを知ると、なぜプラスになりマイナスになるのかが腑に落ちる。

    funding rate は主に2つの部品でできている

    多くの主要 Perps 取引所では、funding rate は概ね次の2要素の合成として設計されている。

    1. プレミアム/ディスカウント成分(Premium/Discount)
      Perps の取引価格が、参照するスポット価格(インデックス価格)からどれだけ乖離しているか。
    2. Perps 価格 > スポット価格 → プレミアム(ロングが過熱) → funding を押し上げる(プラス方向)
    3. Perps 価格 < スポット価格 → ディスカウント(ショートが過熱) → funding を押し下げる(マイナス方向)

    4. 金利成分(Interest Rate)
      伝統金融の先物に「保有コスト(キャリーコスト)」があるのと同様、ベースとなる小さな固定金利を上乗せする設計。多くの取引所で「8時間あたり 0.01%(=1日あたり約0.03%)」程度の小さな値が慣例的に使われてきた。これにより、市場が完全に均衡していても funding がわずかにプラス側へ寄りやすい。

    用語補足
    - インデックス価格(スポット): 複数の現物取引所の価格を平均した「本当の今の値段」の基準値。
    - マーク価格: 清算判定などに使う、操作されにくく補正された Perps の参照価格。funding 計算ではこのマーク価格とインデックス価格の差(プレミアム)を見る。

    計算イメージ(簡略式)

    実際の式は取引所ごとに異なるが、概念としては次のような形になる。

    funding rate ≒ プレミアム成分 + clamp( 金利成分 − プレミアム成分 )
    

    ここで clamp は「上限・下限で挟む」処理。乖離が大きすぎても funding が一度に暴れないよう、多くの取引所は funding rate に上限・下限(キャップ) を設けている。これは事業者にとって「最悪ケースでも 8時間あたりこの%以上は取られない」という重要な前提になる。

    具体的な数値例で追う

    ETH の Perps を例に、ざっくり追ってみる。

    ケースA: 強気でロングが群がっている
    - インデックス価格(スポット): $3,000
    - Perps のマーク価格: $3,003(スポットより 0.1% 高い=プレミアム)
    - このプレミアムが funding rate に反映され、たとえば +0.04%/8h に。
    - → ロング保有者は、8時間ごとにポジション額の 0.04% をショートへ支払う。
    - → $3,000 のロング1枚なら、1回あたり約 $1.2、1日3回で約 $3.6 を支払う。

    ケースB: 弱気でショートが群がっている
    - Perps のマーク価格: $2,997(スポットより 0.1% 低い=ディスカウント)
    - funding rate が −0.03%/8h に。
    - → ショート保有者が、8時間ごとにポジション額の 0.03% をロングへ支払う。
    - → 在庫ヘッジで Short を持っている事業者にとっては、この局面は「ヘッジ維持コスト」になる。

    ポイントは、funding を払うか受け取るかは「ロング/ショートのどちらか」ではなく「過熱している側かどうか」で決まる こと。同じ Short ポジションでも、市場が強気なら受け取り側、弱気なら支払い側に回る。在庫ヘッジの損益が市場心理で揺れるのはこのためだ。


    5. funding rate が事業者にとって何を意味するか

    funding rate は、立場によって「コスト」にも「機会」にも「商品」にもなる。事業オーナーの視点で3つの顔を整理する。

    (1) 在庫ヘッジコストとしての funding

    自社で暗号資産を保有する事業者(取引所、カストディアン、Web3 サービス、トレジャリーを暗号資産で持つ事業会社など)にとって、最大の悩みは 「資産は持ちたいが価格下落は怖い」 という点だ。

    これを解決する定番が、現物を保有したまま Perps で同量の Short を建てる デルタニュートラル・ヘッジ。価格が下がれば現物の含み損を Short の利益が打ち消す。ところが、このヘッジを維持している間ずっと funding が発生する。

    • 市場が 強気(ロング過熱) のとき → Short は funding を 受け取る → ヘッジしながら収益が乗る
    • 市場が 弱気(ショート過熱) のとき → Short は funding を 支払う → ヘッジ維持コストが発生

    つまり funding は、在庫ヘッジにおける 「変動する保険料」。プラスの保険料(=もらえる)になることもあれば、マイナス(=払う)になることもある。財務計画では「ヘッジコストは年率で ±数%〜十数% 揺れうる費目」として扱うのが安全だ。

    (2) 裁定機会(アービトラージ)としての funding

    funding の符号や、取引所間・スポット/Perps 間の funding 差は、そのまま裁定機会になる。代表的なのが キャッシュ・アンド・キャリー(cash-and-carry) と呼ばれる手法だ。

    • funding が継続的にプラス(ロングが払う側)のとき
    • → スポットで現物を買い、同量を Perps で Short する
    • → 価格変動は中和されつつ、Short 側が funding を受け取り続ける
    • → 結果として 価格方向に賭けずに funding 収益だけを抜く

    逆に funding が深くマイナスなら、現物を空売り側に回す逆方向の裁定が成立しうる。プロトコル間で funding rate に差がある場合は、片方で受け取り側・片方で支払い側に回って差分を取る運用もある。事業者にとっては、自社の在庫や流動性を遊ばせず働かせる「もう一つの収益ライン」になりうる。

    注意: 裁定は「理論上ノーリスク」に見えても、清算リスク、取引所カウンターパーティリスク、funding が途中で逆転するリスク、ガス・取引手数料を含めると単純ではない。後述の極端化局面で前提が崩れることがある。

    (3) 利回り源としての funding

    (2) の発想を「自社の運用」ではなく「顧客に提供する利回り商品」へ昇華させたのが、近年広がる funding ベースの利回り商品 だ。デルタニュートラルを維持しながら funding 収益を積み上げ、それを利回りとして投資家に分配する。代表例が後述の Ethena(USDe) に代表される合成ドル設計で、funding rate を「合成ステーブルの利回りエンジン」として明示的に使う。

    事業者にとっての含意はシンプルで、funding rate は「払うもの」と決めつけず、設計次第で「もらうもの」「商品化するもの」に変えられる ということだ。どの顔を選ぶかが、Perps を扱う事業戦略そのものになる。


    6. 長期ショート/ロングのコスト計算

    シナリオ: ETH 1,000枚を在庫ヘッジ

    事業者が ETH 1,000枚($3M 相当)の在庫を保有。Perps で同等の Short ポジションを取り、価格変動を中和する。

    • 想定 funding rate(ETH Perps、平均): +0.01%/8h(市場がやや強気)
    • Short 側は funding を受け取る側 → 事業者にとって収益になる
    • 年間収入: $3M × 0.01% × 3回/日 × 365日 = 約$328,500

    ヘッジしながら年間 約$328,500 の収益が得られる構造。これが「Perps を在庫ヘッジに使うインセンティブ」になっている。

    逆シナリオ: 市場が弱気のとき

    市場がベア(弱気)に傾くと、funding rate がマイナスになる。Short 保有者は funding を支払う側になる:
    - funding rate -0.05%/8h
    - 年間コスト: $3M × 0.05% × 3回/日 × 365日 = 約$1,642,500

    つまり「市場心理によって、ヘッジコストが収益にも費用にもなる」。事業計画では中立シナリオで見積もる。

    上限(キャップ)を前提に最悪ケースを置く

    前述のとおり、多くの Perps 取引所は funding rate に上限・下限を設けている。この上限は事業計画の「最悪ケース」を置くうえで実務的に重要だ。たとえば「8時間あたりの funding 上限が一定%」と決まっていれば、どれだけ市場が一方向に過熱しても、1回あたりのヘッジコストはその水準で頭打ちになる。逆に言えば、funding が長期間その上限に張り付くシナリオ(後述の極端化局面)を計算に含めておくと、想定外の費用増を避けられる。年間 funding コストは「中立・強気・弱気(上限張り付き)」の3シナリオで幅を持って見積もるのが堅実だ。


    7. 主要 Perps プロトコルの funding 設計の違い

    「funding rate」と一口に言っても、その算出ロジックや徴収頻度、参照する価格は プロトコルごとに大きく異なる。事業者が「どこで Short を建てるか」「どこに接続するか」を決めるとき、この違いは直接コストとオペレーションに効いてくる。

    プロトコル 設計 funding 設計の特徴 規制適応性
    Hyperliquid 独自 L1 orderbook オラクル価格とマーク価格の乖離に基づき funding を計算。徴収は短い間隔(1時間ごと)で行う設計で、乖離が大きいと funding が機敏に動く KYC なし、規制対応弱
    dYdX v4 Cosmos SDK 独自チェーン オラクル参照のプレミアム+金利成分という伝統的な perp 型 funding。funding は毎時徴収(レート表示は8時間換算)で、機関が扱い慣れた設計 一部地域 KYC
    Drift Protocol Solana 上 orderbook + vAMM vAMM と orderbook を組み合わせた約定。funding は乖離に応じて継続的に調整。※2026年4月1日に約$285M(北朝鮮関連と疑われる)のエクスプロイトを受け入出金を停止し、2026年6月時点でも復旧途上。利用前に現在の稼働状況を必ず確認すること KYC なし
    GMX プール型(LP がカウンターパーティ) GMX v2 は borrow fee(LP への保有料)に加え、建玉の偏りに応じた funding fee(過熱側→劣勢側の相互移転) も併用する設計 KYC なし

    設計差が事業者に効くポイント

    • 徴収頻度(1時間 vs 8時間): 頻度が高いほど、市場が荒れたときに funding が小刻みに反映される。短いほど「逃げ遅れたときの一撃」は小さくなるが、過熱局面では累積コストが速く積み上がる。
    • funding 交換型 vs 保有料(borrow fee)併用型: Hyperliquid・dYdX・Drift のような funding 交換型は「過熱している側が冷めている側に払う」相互移転が funding の中心。一方 GMX v2 のようなプール型は、建玉の偏りに応じた funding fee(過熱側→劣勢側の相互移転)に加えて、ロング/ショートいずれの建玉にも LP に対する borrow fee(保有料)が乗る。後者の保有料が常時かかる分、Short を建てて funding を“もらいに行く”純粋なネット受取は構造的に薄まりやすい。在庫ヘッジで funding 受取を狙うなら、保有料負担の有無まで含めてコストを比較する必要がある。
    • 参照価格(オラクル/インデックス)の堅牢性: funding はオラクル価格に依存するため、オラクルが薄い・操作されやすい銘柄では funding が荒れやすい。マイナー銘柄をヘッジ対象にするほど、この差が無視できなくなる。

    実数値は時期と銘柄で大きく変動するため、各プロトコルの公式ドキュメントと、Coinglass のような funding rate 集計サービス、規模感は DefiLlama必ず最新の実値を確認 してほしい。本記事の比較は「設計思想の方向性」を示すものであり、特定の数値を保証するものではない。

    機関接続では Hyperliquid や dYdX v4 が現実的選択肢になりやすい。ただし規制対応は別レイヤー(コンプラ KYC ラッパー)が必要なケースが多い。


    8. funding rate が極端化する局面と事業者の注意点

    funding rate は通常レンジに収まっている時間が長い一方、相場の転換点や熱狂のピークで 極端化 する。事業者が損失や運用事故を起こすのは、たいていこの局面だ。

    どんなときに極端化するか

    • 強気相場の天井圏でロングが過熱: 価格上昇に乗り遅れまいとロングが殺到し、Perps がスポットを大きく上回るプレミアム状態に。funding が強くプラスへ振れ、上限に張り付くこともある。ロングを持ち続けるほど funding コストがかさみ、価格が伸び悩むと「funding で溶ける」展開になりやすい。
    • 急落・パニックでショートが過熱: 下落局面では逆にショートが殺到し、funding が深くマイナスへ。在庫ヘッジで Short を持つ事業者は、まさにヘッジが効いてほしいこの局面で funding を支払う側 に回る。「下落で現物が痛み、同時に funding も払う」二重苦に見えるが、Short の値上がり益がそれを補う設計であることを忘れない。
    • 特定銘柄・新規上場銘柄の投機過熱: 流動性の薄い銘柄では、わずかな偏りでも funding が極端化しやすい。

    事業者の注意点

    1. funding コストの累積を毎日モニタリングする: 「ポジションを建てたら終わり」ではない。funding は持ち続ける限り発生し続けるため、累積額をダッシュボードで可視化する。
    2. 極端化局面でのロールやリバランス手順を事前に決める: funding が上限張り付きになったとき、ヘッジ先プロトコルを分散するか、ポジションを縮小するか、判断ルールを平時に作っておく。
    3. 裁定の前提崩壊に備える: 「funding を受け取り続ける」前提のキャッシュ・アンド・キャリーは、funding の符号が反転すると収益が逆流する。反転条件と撤退ラインを明文化しておく。
    4. 清算リスクと funding を切り分ける: 急変動局面では funding コストよりも 清算(ロスカット) のほうが致命的。証拠金維持率に十分な余裕を持たせ、funding コスト最小化のためにレバレッジを上げすぎない。

    過去にも、強気相場のピーク局面で主要銘柄の funding rate が大幅なプラスに振れ、ロング保有のキャリーコストが急騰した事例は繰り返し観測されている(具体的な水準は時期によって異なるため、Coinglass の funding 履歴で確認のこと)。「funding はいつか必ず正常化に向かう」という平均回帰の性質を念頭に、極端値を“当たり前”と思い込まないことが肝心だ。


    9. funding rate を「利回り源」にする — market-neutral 戦略

    ここまで funding を主に「ヘッジに付随するコスト/収益」として見てきたが、視点を反転させると funding そのものを利回りエンジンにする 商品設計が見えてくる。これが market-neutral(市場中立)戦略だ。

    仕組み

    1. 現物(例: ETH や stETH 等)を保有する
    2. 同量を Perps で Short する → 価格変動が中和され、デルタニュートラルになる
    3. ロングが過熱してプラス funding が続く局面では、Short 側が funding を受け取り続ける
    4. この funding 収益を利回りとして積み上げ、商品の利回り源にする

    価格が上がっても下がっても損益はほぼ動かず、収益の源泉は funding(と現物のステーキング利回り等) に限定される。これが「価格に賭けない利回り」の正体だ。

    代表例: Ethena(USDe)

    この設計を大規模に商品化した代表例が Ethena の合成ドル USDe だ。担保資産を保有しつつ Perps で Short を建て、デルタニュートラルを維持しながら funding 収益(およびステーキング収益)を利回り源とする。funding rate は USDe にとって「コスト」ではなく 「利回りの主要エンジン」 であり、本記事で扱ってきた funding メカニズムが、そのまま一つのステーブル系プロダクトの心臓部になっている。

    詳細は Ethena USDe の解説 を参照。

    事業者にとっての含意とリスク

    この戦略は魅力的だが、構造的リスクを正しく理解する必要がある。

    • funding がマイナスに転じる局面: 弱気相場で funding がマイナスになると、Short 側が支払う側に回り、利回りが マイナス(逆ザヤ) になりうる。利回りは funding 環境に依存し、保証されない。
    • カウンターパーティ/取引所リスク: Short を建てる取引所・プロトコルの破綻や凍結は、ヘッジの根幹を崩す。
    • 担保・清算リスク: ヘッジ用 Short の証拠金管理を誤ると清算され、デルタニュートラルが崩れる。

    それでも、funding を「払うコスト」から「もらう利回り」へ反転させるこの発想は、Perps を扱う事業者が 利回り商品を設計する際の核 になる。自社の在庫や流動性をどう働かせるかを考えるとき、最も射程の長い選択肢の一つだ。


    10. 自社在庫ヘッジの3つの戦略

    A: 使う(直接 Perps DEX で Short ポジション)

    • 採用条件: 自社の規制ライセンスで暗号資産デリバティブ取引が許容範囲
    • メリット: 即時実装、流動性に乗れる
    • デメリット: 海外 DEX 利用時の規制論点、KYC ラッパーが別途必要

    B: 組む(自社 Perps プロトコル構築)

    • 採用条件: 自社の差別化軸が「Perps 体験そのもの」、運用人員確保
    • 開発期間: 6-12人月、監査 $80K-250K(規模・コード新規性・監査ファームで大きく変動)
    • 想定例: 機関向け permissioned Perps、業界特化型先物

    C: 乗っかる(機関向け Perps アクセスポータル)

    • 採用条件: 機関顧客基盤、KYC・コンプラ体制
    • メリット: Perps DEX の流動性に乗りつつ、機関顧客向けに UX 提供
    • デメリット: Perps 側の仕様変更に振り回される

    11. 開発期間とコスト、日本の規制論点

    自社 Perps 構築のコスト

    開発項目 目安
    Solidity 実装(vAMM 型) 6-12人月
    Solidity 実装(orderbook 型) 9-18人月
    Oracle 統合 + TWAP 1-2人月

    開発合計: 約7-14人月(vAMM 型の場合、約 $70K-210K)(人月→USD換算は 1人月 ≒ $10K-15K を目安とした概算。orderbook 型はこれより上振れる)

    ―― 以下は別途・規模で変動 ――

    注(監査): $80K-250K。規模・コード新規性・監査ファーム(簡易な個別契約か、複数社/トップティアか)で大きく変動。簡易な fork は下限、新規性が高い・複数社起用は上限。Perps は清算ロジックや価格操作耐性の検証範囲が広く、独自 orderbook 型はさらに上振れる。

    注(外部法務・弁護士費用の目安): デリバティブ該当性や勧誘規制の初期的な法的整理+意見書で一時 $20K-80K(約300万-1,200万円) が目安。暗号資産交換業の登録取得・維持や本格的な業者化を目指す段階では別途継続費用が発生する。これは外部弁護士に支払う費用の目安であり、XTELA が提供する法務サービスではない。

    日本の規制論点

    領域 関連法 主な論点
    業として Perps を提供 金商法 デリバティブ取引該当性、第一種金商業
    自社で在庫ヘッジ 法人税法 デリバティブ評価益の処理
    顧客向け先物プロダクト 金商法・銀行法 投資勧誘・適合性原則
    海外 Perps DEX 利用 国内規制 暗号資産交換業の範囲外、自己責任

    コンプラ部門と弁護士に確認。


    12. まとめ

    事業者目線で Perps funding rate を理解する要点は6つ。

    1. Perpetual = 期日のない先物、funding rate が満期清算の代わりにスポット価格とのズレを補正する
    2. funding rate = ロング/ショートの人気バランス料。プレミアム/ディスカウント成分+金利成分でできており、「過熱している側が冷めている側に払う」
    3. funding は立場で顔を変える。在庫ヘッジでは“変動する保険料”、運用では“裁定機会”、商品設計では“利回り源”
    4. プロトコルごとに funding 設計が違う。徴収頻度、funding 交換型か保有料型か、参照オラクルの堅牢性が事業コストに直結
    5. 極端化局面が事故の温床。上限張り付き・符号反転・清算リスクを平時に手順化しておく
    6. funding は反転できる。「払うコスト」から「もらう利回り」へ——Ethena 型の market-neutral 設計が射程の長い選択肢

    詳しくは Hyperliquidとは?DeFi完全マップ 2026 を参照。


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    XTELA の Perps 関連実装支援知見

    本セクションは XTELA のサービス紹介です。本文中立の技術解説とは分離して掲載しています。

    XTELA は2015年以降、50案件以上のブロックチェーン開発支援を行ってきました。Perps 関連について、以下のような支援が可能です:

    • 自社 Perps プロトコル設計: vAMM 型、orderbook 型、清算ロジック設計
    • 機関向け Perps アクセスポータル: KYC ラッパー、コンプラ統合
    • 在庫ヘッジ自動化: 自社財務オペでの delta-neutral 維持 bot
    • Oracle・TWAP 設計: 価格操作耐性、Chainlink/Pyth 統合

    「自社 Perps を組むか、既存に乗るか、ヘッジ専用に使うか」の意思決定段階から、実装・監査・運用まで並走支援しています。

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