CDP型ステーブル MakerDAO/DAI|自社発行の仕組みと戦略

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CDP型ステーブル MakerDAO/DAI|自社発行の仕組みと戦略
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    本記事は技術解説であり、投資・税務・法務助言ではありません。判断は専門家にご相談ください。

    「自社でステーブルコインを発行したい」——日本でも改正資金決済法の整備により、JPYC、Progmat Coin/XJPY、Project Pax 等が並行発行される時代になった。本記事は事業者目線で、ステーブル設計の最古参かつ最も成熟した MakerDAO / DAI(現在 Sky / USDS にリブランド)の CDP 型設計 を整理し、自社ステーブル発行の判断材料を提示する。


    目次

    1. なぜ事業者がこれを理解する必要があるのか
    2. ステーブルコインの4類型 — 本記事は「暗号資産担保型」
    3. CDP(担保債務ポジション)とは
    4. PSM・Stability Fee・RWA 担保
    5. 2024年 Sky リブランドの意味
    6. 自社ステーブル発行の3戦略
    7. 開発期間とコスト、日本の規制論点
    8. まとめ

    1. なぜ事業者がこれを理解する必要があるのか

    ステーブルコイン発行は2026年現在、日本でも事業の選択肢に入った:
    - JPYC(資金移動業ベース)が2025年10月発行開始
    - Progmat Coin/XJPY(信託受益権型、三菱UFJ信託銀行)
    - Project Pax(Progmat/Datachain 主導、3メガバンク参加)

    これらは「法定通貨担保型」だが、暗号資産担保型(MakerDAO 型)も別の設計思想として存在する。自社で扱う場合の4類型比較は必須知識。


    2. ステーブルコインの4類型 — 本記事は「暗号資産担保型」

    類型 仕組み 代表 日本での法的位置
    法定通貨担保型 $1 = USDC が銀行に保管された $1 と1対1 USDC、USDT、JPYC 改正資金決済法
    暗号資産担保型(CDP型) 担保暗号資産(ETH 等)を預けて鋳造 DAI/USDS 自社発行スキームは別途検討
    アルゴリズミック型 別トークンとの交換で価格維持(内生担保型) UST(破綻)※ FRAX は元来「部分担保型」で、その後ほぼ完全担保化へ移行 高リスク、推奨せず
    合成ドル(delta-neutral) 暗号資産担保 + 永久先物ショートで価格維持 USDe 規制位置付け未確立

    本記事は 暗号資産担保型(CDP型) を扱う。アルゴリズミック型は失敗事例分析を参照。利息付き担保で組む新世代設計は LST-backed Stablecoin (crvUSD / GHO) も参照。


    3. CDP(担保債務ポジション)とは

    仕組み

    CDP(Collateralized Debt Position)は「暗号資産を担保にして、新しいステーブルを鋳造する」設計だ。

    1. ユーザーが ETH 1枚($3,000)を MakerDAO に預ける
    2. プロトコルから DAI($1 ペッグ)を発行できる(最大で担保価値の 67%、つまり $2,000)
    3. ユーザーは DAI を受け取り、他で使う
    4. 後で DAI を返済すれば ETH を回収できる
    5. もし ETH 価格が下がり、担保率(Collateralization Ratio)が清算比率(Liquidation Ratio、ETH-A で 150%)を下回れば清算される(Aave/Compound の「Health Factor」に相当する概念だが、MakerDAO/Sky では担保率・清算比率という用語を用いる)

    これは銀行の「住宅ローン」に近い構造:
    - ETH = 不動産(担保)
    - DAI = 借入金
    - Stability Fee = 金利

    「過剰担保」の必然性

    CDP では「担保価値の100%未満しか借りられない」。例えば $3,000 の ETH 担保で $2,000 までしか DAI を発行できない(67% loan-to-value)。

    これは「担保価値の変動リスクを吸収する余裕(バッファ)」のため。ETH が暴落しても、バッファ内なら清算で全額回収できる。


    4. PSM・Stability Fee・RWA 担保

    PSM(Peg Stability Module)

    DAI の $1 ペッグを維持する仕組みの一つ。「USDC を1:1で DAI に交換できる窓口」を提供する。DAI が $1 から離れたとき、裁定取引でペッグに戻る。

    事業者にとっての意味: 自社ステーブルにも「PSM 的な交換窓口」を組み込むと、ペッグ維持が容易になる。

    Stability Fee

    CDP 利用者が借入時に支払う「金利」相当。年率は市場環境とガバナンス投票によって大きく変動し、担保種別・時期により概ね 5〜15% 超のレンジで推移してきた(固定値ではない)。この収益が MakerDAO/Sky プロトコルの主要収益源。

    RWA 担保の組み込み

    2023年以降、MakerDAO は「米国短期国債を担保として組み込む」拡張を進めた。これにより:
    - ETH 等の暗号資産担保 + 米国債担保のハイブリッド
    - 米国債利回り(4-5%)が Stability Fee 原資に
    - DAI 安定性が向上

    事業者にとっての意味: 自社ステーブルが RWA 担保を組み込めるか、規制側で許容されるかは設計の核心。


    5. 2024年 Sky リブランドの意味

    2024年に MakerDAO は Sky にリブランドし、DAI → USDS、MKR → SKY への移行を進めた(任意のアップグレード、旧 DAI/MKR も併存)。

    リブランドの背景

    • Endgame」と呼ばれるロードマップで、ガバナンスと運営を SubDAO に分割
    • Spark(最初の Star/SubDAO)などオープンソースの貸借プロトコルを展開(Spark 自体は permissioned ではない。機関向けの permissioned/KYC 対応は USDS 側のオプション機能として提供)
    • 規制対応の柔軟性を確保

    事業者目線の含意

    自社ステーブル発行を検討する事業者にとって、MakerDAO/Sky の進化は最も豊富な参考事例:
    - 9年の運用実績
    - 複数のブラックスワン耐性(2020年 Black Thursday、2022年 Terra/Luna 連鎖)
    - RWA 担保への進化
    - ガバナンス分割のモデル


    6. 自社ステーブル発行の3戦略

    A: 使う(既存ステーブルを採用)

    自社で発行せず、USDC・JPYC・Progmat Coin 等の既存を採用する。

    • 採用条件: 規制対応の負担を避けたい、自社の差別化軸は別にある
    • メリット: 規制リスクなし、即時導入
    • デメリット: ブランド価値・収益機会を逃す

    B: 組む(自社ステーブル発行)

    CDP 型 or 法定通貨担保型で自社ステーブルを発行する。

    • 採用条件: 自社の事業ブランド・顧客基盤がある、規制対応の覚悟
    • 開発期間: 6-12人月 + 規制対応 6-12か月
    • 想定例: 業界特化ステーブル(ゲーム、メタバース、地方通貨等)

    C: 乗っかる(既存ステーブル基盤の上に商品設計)

    既存ステーブル(JPYC、Progmat Coin 等)の上に、自社の運用商品・決済商品を組む。

    • 採用条件: 自社の差別化は UX・チャネル・コンプラ
    • メリット: 規制リスク低、流動性に乗れる
    • デメリット: 基盤側の意思決定に依存

    7. 開発期間とコスト、日本の規制論点

    自社ステーブル発行のコスト目安

    ※為替は約 150 円/USD で換算。

    項目(開発) 目安
    Solidity 実装(CDP コア) 6-12人月
    Oracle 統合 1-2人月
    フロントエンド 2-3人月

    開発合計: 約 9-17人月(約 $90K-255K)(1人月 ≒ $10K-15K 換算)。CDP コアは清算・PSM・Stability Fee 等の独自機構を含むため、単純 fork より上振れしやすい。

    ―― 以下は別途・規模で変動 ――

    • 注(監査): 中規模で $40K-150K(約 600 万 - 2,250 万円) が目安。規模・コード新規性・監査ファーム(簡易な個別契約か、複数社/トップティアか)で大きく変動する。CDP は清算・ペッグ維持ロジックの新規性が高く、本格運用・複数社監査を行う場合は上端を超えることもある。
    • 注(外部法務 / 弁護士費用の目安): 初期の法的整理+意見書で 一時 $20K-80K(約 300 万 - 1,200 万円) が目安。これは外部弁護士に支払う費用の目安であり、XTELA が提供するサービスではない。なお、暗号資産交換業等の登録取得・維持や本格的な業者化(取引所級の運用)を目指す段階では、常時の顧問費用として年間 $200K-1M 規模に達することもあるが、これはプロダクト開発段階のデフォルトではない。
    • 注(規制ライセンス取得): 6-12か月(費用ではなく所要期間の目安)。
    • 注(ランニング): Oracle・インフラ・運用監視等の継続費用が別途発生する。

    開発(実装)と、監査・外部法務・ランニングは性質が異なるため、単一の巨大レンジには合算しない。実装段階の確度の高い費用は上記「開発合計」を基準に見積もる。

    日本の規制論点

    領域 関連法 主な論点
    法定通貨担保型ステーブル発行 改正資金決済法 資金移動業 or 信託受益権型の選択
    暗号資産担保型ステーブル発行 改正資金決済法・金商法 該当性の判定(未整備な領域)
    自社ステーブルの国際送金 犯収法・FATF トラベルルール対応
    暗号資産担保の保管 改正資金決済法 カストディの範囲

    これらは法務助言の領域。コンプラ部門と弁護士に必ず確認。

    過去のインシデントから学ぶ設計教訓 — Black Thursday (2020年3月12日)

    CDP 型ステーブルを検討する際、避けて通れない事例が Black Thursday だ。2020年3月12日、COVID-19 ショックで ETH 価格が1日で約40%下落した際、MakerDAO の清算オークションでイーサリアム本体のガス代が急騰し、清算 bot が正常に入札できない時間帯が発生。一部のオークションが「$0 で ETH が落札される」異常状態に陥り、MakerDAO は約400万 USD 相当の担保不足(負債)を計上した。最終的にこの不足分は MKR トークンの追加発行(emergency mint)によって穴埋めされ、後にオークションメカニズム(Liquidations 2.0)が大幅刷新された。

    事業者にとっての含意:
    - 「市場が機能しない瞬間」を想定した設計が必要(ガス代スパイク、清算 bot 停止、Oracle 停滞)
    - エマージェンシー時のガバナンス対応経路を事前に整備する(バックストップ、緊急 pause、追加発行)
    - ホワイトペーパーには出てこない実運用リスクこそ、自社発行検討時の最重要論点

    出典: MakerDAO 公式 post-mortemRekt News 等で詳細参照。


    国内3形態の整理

    2026年5月時点、日本で並行発行されているステーブル:

    名称 発行体 法的根拠
    JPYC JPYC 株式会社 改正資金決済法(資金移動業)
    Progmat Coin / XJPY 三菱UFJ信託銀行・Progmat 基盤 改正資金決済法(信託受益権型)
    Project Pax Progmat/Datachain 主導(3メガバンク参加) 国際送金インフラ(ステーブル発行とは別レイヤー)

    自社で発行する場合、どの類型・どの規制スキームを選ぶかが最大の判断。


    8. まとめ

    事業者目線で CDP 型ステーブルを理解する要点は5つ。

    1. CDP = 暗号資産担保で新ステーブルを鋳造。住宅ローンと同じ構造
    2. 過剰担保が必然で、担保価値変動への余裕を組み込む
    3. PSM・Stability Fee・RWA 担保が運用の柱
    4. 2024年 Sky リブランドで機関対応・ガバナンス分割が進化
    5. 3戦略「使う/組む/乗っかる」で自社の関わり方を決める

    詳しくは ステーブルコインとは?DeFi完全マップ 2026 を参照。


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    XTELA のステーブル発行支援知見

    本セクションは XTELA のサービス紹介です。本文中立の技術解説とは分離して掲載しています。

    XTELA は2015年以降、50案件以上のブロックチェーン開発支援を行ってきました。ステーブル関連について、以下のような支援が可能です:

    • 自社ステーブル発行の前段設計: 法定通貨担保 vs 暗号資産担保の選択、規制スキームとの整合
    • CDP プロトコル設計: 担保管理、Stability Fee、Oracle 統合、清算ロジック
    • PSM 機能の組み込み: ペッグ維持メカニズムの設計
    • 規制対応の前段論点整理(法務助言は別途専門家へ)

    「自社でステーブル発行を検討するか、既存に乗るか」の意思決定段階から、実装・監査・運用まで並走支援しています。

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    本記事は XTELA JAPAN 株式会社が作成しました。 ステーブル発行のご相談は無料技術相談からお問い合わせください。

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