Base(CoinbaseのL2)にサービスを載せるか|強み・弱みと独立後の変化

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Base(CoinbaseのL2)にサービスを載せるか|強み・弱みと独立後の変化
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    日本のアプリ会社が、北米の利用者向けに新しいサービスを出そうとしています。支払いはドル建てのステーブルコイン(USDC)で受けたい。AIエージェントからの少額の支払いも受けたい。どのチェーンに載せるかを検討すると、ほぼ必ず候補に挙がるのが Base です。

    Base は、米国の暗号資産取引所 Coinbase が運営する Ethereum のレイヤー2(L2)です。Ethereum に処理結果を記録しながら、手数料を安く、処理を速くする仕組みです。2023年夏に稼働を始め、2026年9月時点で預けられた資産の額は L2 で最大です。

    一方で、2026年には大きな変化がありました。Base は立ち上げから使ってきた Optimism の OP Stack を離れ、自前のソフトウェアに移りました。載せる側にとって何が変わったのかも含めて、判断に必要なことを順に見ていきます。L2の基本はこちらにまとめています。

    Base はどれくらい使われているチェーンか

    規模を測る数字は、集計元によって大きく違います。預けられた資産の額でいえば、L2BEAT と DefiLlama のどちらで見ても Base が L2 の首位です。ただし金額には倍以上の開きがあります。

    違いの理由は数え方です。L2BEAT の「TVS」は、Ethereum から橋渡しされた資産や Base 上で発行された資産を広く数えます。DefiLlama の「TVL」は、DeFi のサービスに預けられた資産だけを数えます。どちらの数字を使うときも、出どころを添えるのが安全です。

    指標Base の数値出典
    預けられた資産の額(TVS)約161.6億ドルで L2 首位(2位の Arbitrum One は約116.7億ドル)L2BEAT
    DeFi に預けられた資産の額(TVL)約61.8億ドルで L2 首位DefiLlama
    1日の処理件数1秒あたり約122件、1日にすると約1,000万件L2BEAT(UOPS)
    利用者が払ったガス代2025年の合計で約7,750万ドル。直近30日で約480万ドルDefiLlama

    ガス代の合計を処理件数で割ると、1件あたりはおおむね1セント台です。あくまで平均なので、混み合う時間帯には上がります。

    上で動いているサービスも厚みがあります。DefiLlama で Base 上の預かり額が大きいのは、貸し借りの Morpho と Aave です。取引所(DEX)では Uniswap と、Base 発の Aerodrome が大きな規模を持っています。Aerodrome の預かり額は、2024年12月の約12.5億ドルが最高でした。いまは約3.9億ドルです。

    北米の利用者や USDC 決済なら、なぜ Base が候補になるのか

    理由は、Coinbase という取引所の周りに、利用者を連れてくる道具がそろっていることです。性能だけなら、同じくらい安くて速い L2 はほかにもあります。Base が違うのは、次の3つが1か所で手に入る点です。

    • USDC が Base 上で直接発行されている:発行元の Circle が、Base を USDC の公式な発行先の1つとして公開しています。ブリッジで持ち込んだ代わりの通貨ではないので、決済に使いやすくなります。
    • Coinbase の開発者向けの道具が Base を前提にしている:Coinbase Developer Platform は、ウォレットや決済の仕組みを開発者に提供しています。法定通貨からの入金(オンランプ)も含まれます。Base の公式ドキュメントにも、USDC での支払いの受け方の手順が並んでいます。
    • AIエージェント向けの支払い規格 x402 の手順がそろっている:x402 は、Webの通信(HTTP)の中で代金を払えるようにする規格です。Base の公式ドキュメントには、API の利用料を x402 で受け取る手順が載っています。

    x402 は Base 専用ではありません。Linux Foundation 傘下のプロジェクトとして運営され、どのチェーンでも使える中立な規格です。x402.org によると、直近30日の利用は全ネットワーク合計で約7,541万件、約2,424万ドルでした。Base を選ぶ理由は「x402 が使えるから」ではありません。「x402 と USDC と Coinbase の道具を一緒に使いやすいから」です。基本はAIエージェントの決済とx402で解説しています。

    株式などの資産をトークンにして発行したい場合にも、Base は動いています。2026年6月の更新(Beryl)で、Base は独自のトークン規格「B20」を入れました。ERC-20 と互換で、発行の停止や送付先の制限など、発行者が求める機能を最初から備えています。

    2026年に Base が OP Stack から独立して、何が変わったのか

    Base は、Optimism が開発する OP Stack というソフトウェア一式を使って立ち上がりました。同じ仕組みで動くチェーンは「Superchain」と呼ばれる仲間を作っています。Base はその中で一番大きなチェーンでした。

    公式に発表されたこと

    2026年2月18日、Base は公式の技術ブログで、Base が自ら運営するソフトウェア一式へ移ると発表しました。ソフトウェアは GitHub の base/base にまとめられています。発表で Base が挙げた目的は3つです。

    • 更新を速く出す。大型の更新を年3回から年6回の小さな更新に分ける
    • Base に必要な部分だけに絞り、仕様とコードを分かりやすくする
    • Ethereum 本体の改善を先に試し、Ethereum の計画づくりに役立てる

    同じ発表で、Base は OP Stack から離れていくと明言しました。一方で Optimism とは、OP Enterprise の顧客として協力を続けるとしています。管理を担う委員会(Security Council)からは Optimism が抜け、代わりに独立した署名者を1人加えるとしました。L2BEAT の記録では、2026年3月4日に Base は Superchain の運営の取り決めから外れています。

    独立後の最初の更新が、2026年5月28日の「Azul」です。これ以降、Base のノードは Base 製のソフトウェアでしか動きません。6月25日には「Beryl」が続きました。9月30日には「Cobalt」、10月には「Denim」が予定されています。

    Base に載せる側にとって変わったこと

    アプリを載せるだけなら、ほとんど変わりません。Azul のときも、Base は「ほとんどのアプリは変更不要」と説明しています。これまでの接続口(RPC)も、そのまま使えます。

    変わったのは、更新の速さです。年6回ペースの更新には、アプリに影響する変更がときどき含まれます。Azul では、1件の取引に使えるガスに上限が付きました。10月予定の Denim では、今の「Flashblocks」という速報の仕組みが、200ミリ秒ごとの正式なブロックに置き換わります。更新の予定は、Base の公式ドキュメントの「Upgrades」ページで追えます。

    Ethereum へ資金を戻す時間も短くなりました。Azul で、証明の仕組みが「TEE」と「ゼロ知識証明(ZK)」の二本立てになりました。両方がそろえば最短1日で引き出せます。ただ、ZK 証明は作るのに費用がかかるため、この速い道はあまり使われていません。よく使われる片方だけの道は、Beryl で7日から5日に縮みました。

    Superchain の仲間どうしの連携を前提にした設計は、見直しが必要かもしれません。Base はその運営の取り決めから外れたためです。Soneium や Unichain などとの連携が要るなら、今の Base が対象かどうかを公式情報で確かめてください。

    載せる前に知っておきたい Base の弱み

    順番を決める役が Coinbase の1か所だけ

    取引の順番を決めてブロックを作る役(シーケンサー)を、Base は Coinbase だけで動かしています。L2BEAT もこの点を「中央集権的なシーケンサー」として示しています。ここが止まると、Base 全体が止まります。

    実際に2026年6月25日と26日、Base は2回止まりました。1回目は116分、2回目は20分です。Base の公開した事故報告によると、原因はブロックを作るソフトの不具合でした。資金は失われていません。ただ、その間は新しい取引を受け付けられませんでした。

    止まっている間も、利用者は Ethereum 側から直接取引を送れます。ただし反映まで最大12時間かかります。決済のように止まると困るサービスなら、止まったときの画面や問い合わせ対応を先に決めておく必要があります。

    運営側がすぐに仕組みを変えられる

    Base の仕組み(スマートコントラクト)は、2者の承認で即座に変えられます。2者とは、Base の運営側の管理者と Security Council です。L2BEAT は「望まない変更があっても、利用者が先に逃げる猶予はない」と指摘しています。

    L2BEAT は、L2 の成熟度を Stage 0〜2 の3段階で評価しています。Stage 0 は少数の運営者が全部を握る状態、Stage 2 はコードだけで動く状態です。Base はその間の Stage 1 です。Stage 1 では、引き出しを止めたり不正な引き出しを通したりするには、Security Council の75%以上を乗っ取る必要があります。Base は2025年4月に Stage 1 に達しました。なお、Stage は分散の度合いを表すもので、安全性の点数ではありません。

    更新が速いぶん、追いかける手間が増える

    年6回ペースの更新は、機能が早く届く反面、開発側の確認作業も増やします。とくに Flashblocks の速報を直接受け取っている場合は、更新のたびに影響を確かめる必要があります。OP Stack の資料がそのまま当てはまらない場面も増えていきます。

    自社サービスを Base に載せるかどうか、どう決めるか

    利用者がどこにいて、何で払うかで向き不向きがはっきり分かれます。北米の利用者と USDC なら Base が有力です。日本の利用者と円なら、ほかのチェーンが合う場面が多くなります。

    目的Base の向き不向き
    北米の利用者を集めたい(Coinbase の利用者層)◎ Coinbase の入金・ウォレットの道具とつなぎやすい
    USDC で決済・送金したい◎ Circle が直接発行している
    AIエージェントから少額の支払いを受けたい◎ x402 の公式の手順がそろっている
    日本語の画面・円での決済が中心△ Soneium なども比べる
    参加者を限った許可型のチェーンが要る× Japan Open Chain や ZKsync Prividium を検討

    XTELA の採用判断 5軸スコア

    XTELA は、主要な L2 を5つの軸で採点して比べています。Base の採点は次のとおりです(2026年4月時点の評価)。

    Base の採用判断5軸スコア:エコシステム5・流入経路5・開発者体験4・コスト4・長期継続性3、総合21/25
    図 7-1:Base 採用判断5軸スコア(Arbitrum と横比較)
    軸スコア根拠
    エコシステム厚み5/5L2 TVS で Arbitrum と首位争い($5B-$8B レンジ/DefiLlama・L2BEAT 計測法差異あり)、アクティブdApp 480+。Aerodrome 約 $0.4B-0.6B(2026年4-5月、ピーク $1.5B)、USDC ネイティブ発行拠点として DeFi 厚み圧倒的
    ユーザー流入経路5/5Coinbase Exchange 北米数千万人から直結。Coinbase Wallet MAU 約320万(2025年実績)/ Coinbase 本体 MTU 約1,000万〜1,200万。オンランプ手数料0-1%で他L2に真似できない構造
    開発者体験4/5OP Stack 継承の EVM 完全互換、Foundry/Hardhat フル対応。ただし2026年の独自スタック移行で、ノード運用ドキュメントに一時的な乖離あり
    コスト4/5平均 TX $0.003-0.01、Arbitrum とほぼ同水準。混雑時に一時 $0.05+ まで上昇する点は減点
    長期継続性3/5Coinbase という上場企業の堅牢性は L2 随一。一方で Sequencer 100% 単独運営、トークン未発行、独自スタック移行期のリスクが減点要因

    総合:21 / 25。エコシステムと流入経路が極端に強く、汎用 L2 として最も無難な選択肢です。一方で、中央集権性と独自スタック移行のコストが構造的なリスクです。

    Base を第一候補にしなくてよい場合

    • 利用者がほぼ日本国内で、円建ての決済が中心:Coinbase の入り口の強みが活きにくくなります。Soneium や Japan Open Chain と比べてください。
    • 取引内容を外に見せたくない、または参加者を限りたい:Base は誰でも中身を見られる公開チェーンです。許可型の仕組みが必要になります。
    • Superchain の仲間どうしの連携が前提:前の節のとおり、今の Base が対象かを先に確かめます。

    日本の利用者に暗号資産やトークンを扱わせる場合は、法制度も変わる途中です。2026年7月に改正金融商品取引法が公布され、暗号資産は金商法の対象へ移ります(施行は公布から1年以内)。自社の設計がどう当てはまるかは、弁護士に確認してください。

    自社チェーンを考えている事業者は、Base から何を読み取れるか

    自社専用のチェーン(アプリチェーン)を持つか迷っている事業者にとっても、Base は参考になります。

    1つ目は、集客の強さです。Hyperliquid は、先物取引に特化した専用チェーンで利用者を集めました。Base は逆に、何でも載る汎用の L2 のまま大きくなりました。差を生んだのは機能より、Coinbase という取引所の利用者を連れてこられたことです。

    2つ目は、既製のソフトで始めて、あとから自前に移る道があることです。Base は OP Stack で立ち上げ、約2年半後に自前のソフトへ移りました。ただしこれは、専任の開発チームを抱える Coinbase だからできた移行です。

    3つ目は、依存先が変わるだけだという点です。Base は OP Stack から離れた分、運営を Coinbase 1社により強く頼る形になりました。日本で同じ形を目指すなら、国内の取引所とつながる入り口を持てるかが最初の論点になります。

    4つ目は、独自トークンが無くても事業は成り立つという点です。Coinbase 株(COIN)が、実質的に Base の価値の受け皿になっています。Base トークンを発行しないことで、証券と認定されるリスクを避けながら、COIN 株主への還元を最大にしています。トークンなしの L2 運営は Soneium と同じ戦略です。

    5つ目は、Base の離脱が他の OP Chain に波及する可能性です。XTELA は、Base の離脱が「連鎖離脱」の起点になり得ると見ています。現実的な波及の見立ては次のとおりです。

    • Unichain(Uniswap):UNI 保有者の価値という観点で離脱の動機があります。2026年末〜2027年前半に動く可能性を見ています
    • Ink(Kraken):Kraken の株式上場後1〜2年で、離脱の動機が生じると見ています
    • Soneium(Sony):合弁の意思決定の速さから、離脱の可能性は低〜中です
    • World Chain(Tools for Humanity):World ID という独自の価値の源泉があるため、中期的に可能性があります
    • Zora / Mode / Fraxtal:独自運営の費用を回収できない規模のため、残留の可能性が高いと見ています。なお2026年9月16日に、Zora・Mode・Metal の更新権限は Superchain の管理から Conduit のマルチシグへ移りました

    実装する人向けの詳細

    2026年の Base の更新

    更新名本番の有効化主な変更
    Azul2026年5月28日(テストネット 4月20日)独立後最初の更新。ノードを base-reth-node と base-consensus に一本化。TEE と ZK の二本立て証明。Ethereum の Osaka 仕様に合わせる
    Beryl2026年6月25日(テストネット 6月18日)B20 トークン規格。証明1本での引き出し待ちを7日→5日。Reth V2
    Cobalt2026年9月30日予定(テストネット 9月23日)B20 の改良、validity transactions、ノードを再起動せずに更新を有効化する仕組み、TEE への移行
    Denim2026年10月目標200ミリ秒ごとの正式なブロック。Flashblocks を置き換える

    アプリ側で確かめること

    • 1取引のガス上限:Azul から、1件の取引に使えるガスは 16,777,216(2の24乗)までです。Ethereum 本体の EIP-7825 と同じ値です。大きな一括処理は分割が必要になることがあります。
    • プリコンパイルのガス代:Azul で secp256r1(パスキー署名の検証)のガス代が 6,900 に上がりました。MODEXP も値上げと入力サイズの上限が入っています。パスキーのウォレットを使うなら見積もりを見直します。
    • Flashblocks の利用:Azul で WebSocket の配信内容から残高とレシートが消えました。Denim では Flashblocks そのものが 200ミリ秒ブロックに置き換わります。公式の移行手順(Migrate From Flashblocks)を確認してください。
    • RPC:optimism 名前空間を含む既存の RPC は引き続き使えると、Base は発表しています。チェーン ID は 8453 のままです。

    ノードを運用する場合

    • Azul 以降、Base のノードは base/base のリリースだけを使います。Optimism のリリースは使えません。
    • 公開ノードのイメージは ghcr.io/base/node に移りました。以前の base/node リポジトリはアーカイブされる予定です。
    • 更新ごとに、有効化の期限までの移行が求められます。GitHub のリリースと公式ドキュメントの「Upgrades」ページを追ってください。

    引き出しと検閲への備え

    • Ethereum への引き出しは、TEE と ZK の証明がそろえば最短1日、片方だけなら5日で確定します。Base によると、1日の道は ZK 証明の費用のため実際にはあまり使われていません。L2BEAT は、最悪の場合の待ちを約5日12時間としています。
    • シーケンサーを通らずに取引を入れるには、Ethereum 上の OptimismPortal に送ります。反映まで最大12時間です。
    • 引き出し待ちを画面でどう見せるかは、L2の出金待ち時間のUX設計で扱っています。

    まとめ

    北米の利用者に USDC で払ってもらうサービスなら、Base は最有力の候補です。Coinbase の入金・ウォレット・x402 の道具を、1つのチェーンでまとめて使えるからです。

    一方で、シーケンサーは Coinbase 1社だけで、2026年6月には実際に止まりました。2026年の独立後は、更新も年6回ペースで届きます。止まったときの対応と、更新を追う担当を決めてから載せるのが現実的です。日本の利用者と円が中心なら、Soneium などとの使い分けも検討してください。

    この記事の主要ポイント

    • Base は Coinbase が運営する Ethereum の L2。預かり額は L2BEAT・DefiLlama のどちらでも L2 首位
    • USDC の直接発行、Coinbase の開発者向けの道具、x402 の手順がそろい、北米・USDC 決済で有力
    • 2026年2月に OP Stack からの移行を発表し、5月の Azul から Base 製のソフトで動いている
    • アプリはほぼ変更不要。ただし更新は年6回ペースで、ガス上限や Flashblocks の変更に注意
    • シーケンサーは Coinbase だけで、2026年6月に計136分止まった。運営側は仕組みを即座に変えられる

    関連コラム

    数値と出典(2026年9月25日に確認)

    1件あたりのガス代(1セント台)は、DefiLlama の直近30日のガス代合計を L2BEAT の処理件数で割った目安です。


    XTELAができること

    XTELA は Web3 と AI の設計・開発スタジオです。Base へのアプリの実装や、Soneium など日本向けの L2 との使い分けを設計します。自社チェーンを持つかどうかの検討も、技術の側から一緒に進めます。法的な判断は弁護士と連携して進めます。

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