バッテリーパスポートとは?2027年義務化に向けた取り組みと課題

コラム

2026/08/31

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2026/08/31

バッテリーパスポートとは?2027年義務化に向けた取り組みと課題
目次

    欧州で販売されるEVバッテリーは、2027年2月よりデジタル上の証明書(バッテリーパスポート)が必須となります。対応を怠ればEU市場から締め出されるため、関連企業にとってはもはや「検討」ではなく「実行」のフェーズです。

    しかし、規則は明確になったものの、具体的な取得プロセスは依然として不明瞭で、戸惑う声も聞かれています。

    本記事では、バッテリーパスポートの基本概要、実装課題、そしてデータの信頼性を担保する体制づくりまでを解説します。

    バッテリーパスポートとは?

    バッテリーパスポートとは、バッテリーのライフサイクル情報を管理するデジタル証明書です。EUが推進するDPP(デジタルプロダクトパスポート)の一種として位置付けられ、QRコードを通じて情報開示を行います。

    対象となる企業にはデータの作成・管理責任が求められます。まずは基本的な仕組みを確認していきます。

    バッテリーパスポート=バッテリーのライフサイクル情報を記録した証明書

    バッテリーパスポートとは、バッテリーのライフサイクル情報をデジタルで管理する証明書です。 製造から利用、リユース、リサイクルに至るまでの全工程におけるデータを記録し、QRコードを通じて関係者がアクセスできる仕組みとなっています。

    記録される主な情報は以下の通りです。

    • バッテリーの識別情報および技術的特性
    • 製造業者および貿易関連事業者
    • 性能および耐久性に関するデータ
    • 修理、再利用、リサイクルを支援するための情報
    • サステナビリティおよび循環性に関連する情報

    電池の製造から利用、リユース、リサイクルまでの情報を記録するデジタル証明書です。

    バッテリーパスポートの主な要件:

    European Commission - Digital Product Passport for Batteries (Battery Passport)

    出典:European Commission – Digital Product Passport for Batteries (Battery Passport)

    製品情報だけでなく、原材料の由来やカーボンフットプリント、性能情報などを管理し、サプライチェーン全体の透明性向上を目的としています。

    バッテリーパスポートが義務づけられる背景

    証明書が義務化される背景には、2016年に発効したパリ協定があります。パリ協定では、世界の平均気温上昇率を産業革命前比で2℃未満に抑える(1.5℃を目標)ことが合意され、その実現にはCO₂排出量の測定・報告・検証(MRV) が不可欠とされているからです。

    バッテリーパスポートは、このMRVをバッテリー産業において具体化したものです。EUが先駆者的に実施に踏み込んだ形となります。

    2016年のパリ協定によるCO₂削減への取り決め

    出典:全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)- パリ協定

    出典:全国地球温暖化防止活動推進センター(JCCCA)- パリ協定

    地球温暖化を食い止めるためには、CO₂排出の要因である化石燃料を他のリソースへと移行させる必要があります。各国はCO₂排出削減の目標を定め、すでに多くのグローバル企業がネットゼロ(実質の排出量ゼロ)に向けて動き出しています。

    原材料の調達から製造・使用・廃棄に至るまでのカーボンフットプリント(CFP) を算出・開示することで、「CO₂排出量の少ないバッテリーが市場で優遇される」仕組みを創り出します。

    SDGsの観点からも、リサイクル可能な安全な素材であることを証明する手段になるとされています。

    参考:EUR Lex – European Parliament and Council of the European Union, Regulation (EU) 2023/1542 

    バッテリーパスポートは「DPP(デジタルプロダクトパスポート)」の一種

    バッテリーパスポートは、EUが推進するDPP(デジタルプロダクトパスポート) の先行事例として位置付けられています。

    DPPとは、製品の環境情報やライフサイクル情報をデジタル化するEUの枠組みです。将来的には繊維製品や電子機器など、バッテリー以外の製品にも拡大される見込みです。そのため、バッテリーパスポートへの対応は、今後のより広範な規制対応の「第一歩」 として捉えることができます。

    バッテリーパスポート発行の仕組み

    バッテリーパスポート発行の仕組み

    電池関連業者にとって2027年2月までに対応することが急務となっています。

    参考:電池サプライチェーン協議会 – 電池エコシステム構築に向けて

    関連記事:デジタル製品パスポート(DPP)とは?対象製品・時期・企業の準備を解説

    初期パスポートの対象範囲とQRコードによる情報開示の仕組み

    証明書の第一弾となるバッテリーパスポートの対象は、EVバッテリー(電気自動車用)、産業用バッテリー(2kWh超)、LMTバッテリー(電動スクーター・eバイク等)の3カテゴリです。いずれも2027年2月18日から同時に義務化されます。なお「2kWh超」の条件がかかるのは産業用バッテリーのみで、EVバッテリーとLMTバッテリーは容量を問わず対象です。ポータブルバッテリー(家電・電動工具等)とSLIバッテリーは現時点で対象外とされ、拡大時期も定められていません。

    対象となるバッテリーには固有のQRコードが付与されます。このQRコードが「情報へのアクセス窓口」 として機能し、利用者や事業者は読み取ることでバッテリーパスポートの詳細が確認できる流れです。

    パスポートを確認する流れ

    パスポートを確認する流れ

    QRコードから確認できる情報は多岐にわたります。

    • カーボンフットプリント:ライフサイクルCO₂排出量、工程別内訳
    • 素材の安全性:有害物質の含有有無、原材料の調達国・鉱山情報
    • 流通の透明性:製造・加工工程のトレーサビリティ
    • 性能・耐久性:容量、出力、充放電サイクル寿命
    • 循環性:リサイクル含有率、解体・再利用手順

    ここで重要なのは、QRコード自体はあくまでもアクセスリンクであり、実際の詳細データはクラウドやブロックチェーンなどの分散型システムで管理される設計が想定されています。データの性質上、すべての情報が一点に集中するのではなく、各事業者(製造業者・輸入業者など)がそれぞれの工程における自社データを公開・保持・更新する仕組みです。

    バッテリーパスポートは誰が作成・管理する必要がある?

    バッテリーパスポートの作成・管理に法的な責任を負うのは、そのバッテリーをEU市場に上市する経済事業者、つまり製造業者や輸入業者です。では、EUへの輸出を行わない業者、国内のみで取引する業者は関係ないかというと、ここに落とし穴があります。

    上市事業者は、パスポートに載せるデータを自社だけで揃えることができません。原材料の調達から部品製造、物流に至るまで、各工程を担う取引先からデータの提供を受けて初めてパスポートが成立します。そのため、EU向けに製品やサービスを提供しない場合でも、取引先がEU市場に参入している場合は、その取引先から自社工程のデータ提出を求められる立場になります。
    なぜなら、バッテリーのカーボンフットプリントは、原材料の調達から製造・流通・廃棄に至る全工程を対象に算出されるからです。

    CO2排出量の算定範囲

    例えば、A社からB社へ部品を届けるために使用した配送業者のカーボンフットプリント(CFP)も、その算出範囲に含まれます。つまり、1つの製品を取り巻くすべてのサプライチェーンがデータ提供の対象となります。

    言い換えると、求められたデータを提出できない事業者、CO₂排出量を開示できない事業者はビジネス機会を失っていくリスクが生じます。国内・海外を問わず、少しでも電池製造・販売に関連性があると判断できる場合は早急の対応が必要です。

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    欧州電池規則(EU Battery Regulation)とは?

    バッテリーパスポートはEU電池規則に基づいて導入されます。この規則は環境負荷の低減だけでなく、トレーサビリティの確保やサプライチェーンの透明化も目的としています。グローバル企業にとってはコンプライアンス上の重要テーマです。

    2027年2月の導入期限に向けた背景と目的

    バッテリーパスポートは、EU電池規則(Regulation (EU) 2023/1542 の施策の1つです。この規則は、環境負荷の低減(CO₂削減)だけでなく、トレーサビリティの確保やサプライチェーンの透明化も目的としています。

    EUは循環型経済(サーキュラーエコノミー) の実現を掲げており、その一環としてバッテリーのライフサイクル全体を管理する枠組みを構築しています。2027年2月の義務化は、その最初のマイルストーンです。

    参考:EUR Lex – European Parliament and Council of the European Union, Regulation (EU) 2023/1542 

    サプライチェーン全体の透明化とトレーサビリティの重要性

    近年、バッテリー原材料の採掘に伴う人権問題や環境負荷への関心が世界的に高まっています。コバルトやリチウムの採掘現場における児童労働や、環境破壊の問題は、バッテリー産業全体のリスクとして認識されています。

    バッテリーパスポートは、原材料の採掘から製品廃棄までを追跡できるトレーサビリティ体制を構築することで、こうしたリスクを可視化し、改善を促す役割を担います。

    グローバル市場におけるコンプライアンス対応の必要性

    EU規制は域外企業にも適用されるという点が極めて重要です。日本企業であっても、EU向けにバッテリーやEVを輸出する場合は、この規制の対象となります。

    規制対応の遅れは、EU市場へのアクセス制限だけでなく、グローバルな取引先からの信頼低下にもつながりかねません。早期の準備体制構築が、競争力維持の鍵を握ります。

    バッテリーパスポートに必要な項目とデータモデル

    バッテリーパスポートでは静的データと動的データの管理が必要です。これらのデータには、SOC・SOHやカーボンフットプリントなどの重要指標も含まれます。

    結果としてパスポートには膨大なデータが格納されることになります。効率的に安全に管理する手段として使われているのが、クラウドやブロックチェーンの分散型技術です。

    ここでは、バッテリーパスポートのデータ項目とデータモデルについて見ていきます。

    バッテリーパスポートには「静的データ・動的データ」が必要

    バッテリーパスポートで管理されるデータは、大きく静的データと動的データに分類されます。

    データ種別特徴具体例
    静的データ製造時点で確定し、変わらない情報製品型番、製造日、製造国、原材料情報、設計仕様
    動的データ運用状況に応じて更新される情報SOC(充電状態)・SOH(健全性)、充放電履歴、修理履歴、リユース履歴

    静的データは製造時に一度登録すれば終わりですが、動的データはバッテリーが使用され続ける限り継続的な更新が必要です。一度公開したら終わりというわけではない、この動的データの管理が、運用フェーズにおける最大の課題の一つです。

    「SOH(バッテリーの健全性)」とサステナビリティのエビデンス

    SOH(State of Health) は、バッテリーの健全性を示す重要な指標です。新品時の容量に対して現在の容量がどの程度維持されているかを示し、以下の用途で活用されます。

    • 中古バッテリーの価値評価
    • リユース(定置用蓄電池など)の可否判断
    • 廃棄タイミングの適正化

    同時に、カーボンフットプリントやリサイクル材使用率も、サステナビリティを証明する重要なエビデンスとして位置付けられています。

    参考:東京電力 – SOC SOHとは?

    クラウドを活用したデータの一元管理とプラットフォーム連携

    バッテリー1台あたりのデータ量は膨大であり、対象台数が数万台・数百万台に及ぶことを考えると、データ管理の基盤としてクラウドの活用は事実上必須です。

    具体的には、

    • サプライチェーン全体から収集したデータをクラウド上で一元管理
    • 既存のERP(基幹系システム)やMES(製造実行システム)とのAPI連携
    • リアルタイムでのデータ更新とアクセス制御

    というように、クラウド基盤を活用した一元管理や、ERP・MESなど既存システムとの連携が重要になります。

    バッテリーパスポートのアクセス権限と公開範囲

    すべての情報が誰でも閲覧できるわけではありません。バッテリーパスポートでは、利用者種別に応じたアクセス権限の段階的設定が求められます。

    アクセスレベル対象者閲覧可能な情報例
     一般公開消費者・一般ユーザー基本仕様、CO₂性能クラス、リサイクル可否
     事業者限定リサイクル業者・整備事業者解体手順、材質詳細、リサイクル施設情報
     規制当局向けEU加盟国当局・認証機関全データ(監査・検証用)

    参入業者の属性ごとに権限管理を適切に設計することが、情報セキュリティと利便性の両立には欠かせません。

    なぜバッテリーパスポートではブロックチェーンが活用されるのか

    バッテリーパスポートにおいて、データの改ざん防止は最も重要なテーマの一つです。 なぜなら、このパスポートが「信頼できる証明書」として機能するためには、記録されたデータが「改ざん不可能」であることが前提となるからです。

    こうした機能はまさにブロックチェーンが得意とするフィールドです。ブロックチェーンは、「不変性」と「追跡性」を提供するインフラとして注目されています。

    パスポートにおける具体的なブロックチェーンの役割は以下の通りです。

    ブロックチェーンの特性バッテリーパスポートでの価値
    改ざん耐性一度記録されたデータは事実上書き換え不可能。CO₂排出量や調達情報の「証拠」として機能
    トレーサビリティ誰が・いつ・どのデータを更新したかが履歴として残り、監査が容易に
    分散型台帳単一事業者に依存せず、サプライチェーン全体でデータを共有・検証可能に
    スマートコントラクトデータ更新やアクセス権限の自動化・条件付き実行が可能に

    ただし、ブロックチェーンだけでデータの正確性を保証できるわけではありません。 ブロックチェーンが保証するのは「一度記録されたデータが改ざんされていないこと」であって、「記録時点のデータが正しいこと」を保証するわけではありません。

    なぜバッテリーパスポートではブロックチェーンが活用されるのか

    例えば、入力時点にそもそも誤った情報や計測ミスがあったとしても、ブロックチェーンで検知することはできないのです。この限界を補うために、第三者認証機関による監査やコンソーシアム型のガバナンス体制が併せて必要となります。

    ブロックチェーンは、一旦認証されたデータを「正しい状態」「改ざん不可能な状態」で保存する技術として位置づけられています。

    バッテリーパスポートの実装における3つの課題

    バッテリーパスポートの実装にはコストやシステム連携、データの信頼性確保などの課題があります。特にデータ品質を維持するためには、技術だけでなく運用ルールやガバナンス体制の整備が欠かせません。

    次に、実装における3つの課題を解説します。

    導入コストの負担とシステム連携の難しさ

    まず留意しておきたい課題は導入コストです。新たなシステム構築やデータ収集体制の整備には、多大な初期投資が発生します。

    具体的なコスト要因

    • データ収集・管理プラットフォームの構築費用
    • 既存システム(ERP・MES・SCM)とのAPI連携開発費用
    • サプライヤー側のデータ入力等の環境整備支援
    • 社内体制の構築・人材育成費用

    サプライチェーン全体でデータ形式の統一や共通フォーマットへの準拠が求められるため、技術的にも運用面でも決して容易だとは言えません。

    確かに、ブロックチェーンの分散型システムに記録することによるメリットはあります。全事業者が同一のデータ参照先を持ち、個別システム間の複雑なデータ連携をシンプルに処理できるなどです。

    ただし、ブロックチェーン初期導入コストは一定額以上となり、安価では済まないことが予想されるため適切な判断が必要です。

    関連記事:XTELA – ブロックチェーン開発の費用・コストを解説

    情報セキュリティの確保と「データの信頼性を担保する体制づくり」

    また、いかに信頼性を担保するかも、バッテリーパスポートの実装で重要となる課題です。グローバルな取引が基盤となるがゆえに、データの信頼性は不可避的な要素です。

    開発者の視点:XTELA JAPAN代表取締役 小幡拓弥 仕組みがあっても書き込み時点の不正を防ぐには限界があります。コンソーシアム型などの認証機関や信頼できる参加者による体制づくりとガバナンスが不可欠です。

    ブロックチェーンシステム上で改ざん防止対策を講じても、データそのものの信頼性は担保できません。そのため、第三者認証機関による監査に加え、VC(Verifiable Credentials)のような検証可能な電子証明の規格を組み合わせる方法が有力です 

    技術(ブロックチェーン)だけでは不完全であり、以下のようなオフチェーンのガバナンスが併せて求められます。 

    • 第三者認証機関によるデータ検証・監査
    • コンソーシアム型運営による参加者の信用性担保
    • データ入力プロセス自体の標準化・自動化(人的ミス・不正の混入余地を減らす)

    ブロックチェーンは、このガバナンスの「証拠基盤」 として機能します。誰がいつどのデータを入力したかが不変の履歴として残ることで、事後的な検証が可能になり、不正の抑止力にもなります。信頼できる参加者とガバナンスの仕組みを構築することが、長期運用の鍵となります。

    関連記事:トレーサビリティにブロックチェーンを使う理由

    国際的な標準化への対応

    バッテリーパスポートは、グローバルなデータ連携が前提となります。EU域内だけで完結する話ではなく、原材料の産出国や部品サプライヤーが世界各地に存在するからです。

    そのため、国際標準化への対応が不可欠です。

    • 共通データモデル(GS1、ISOなどの国際規格への準拠)
    • 相互運用可能なフォーマット(JSON-LD、XMLなど)
    • 識別子の統一(UIDのグローバルな一意性)

    企業ごとの独自仕様では連携が難しくなります。早期の段階でグローバルな視野を取り入れたデータシステム構築を具体化していきましょう。

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    日本企業がバッテリーパスポートを導入しないとどうなる?

    バッテリーパスポートへの対応は単なる規制対策ではありません。未対応の場合は輸出や取引に影響する可能性があります。ESG評価の低下により、サプライチェーンから排除されるなど企業の競争力に直結する問題だと言えます。

    EU市場での輸出制限・コンプライアンス違反のリスク

    EUにおけるバッテリーパスポートの義務化は、法律として定められた規制です。要件を満たせない場合、EU市場での製品販売が事実上不可能になります。

    具体的なリスク:

    • 税関での通関拒否
    • 販売禁止措置
    • 制裁金(EU加盟国ごとに定められるペナルティ)
    • リコール命令

    EU電池規則は、表示義務やデューデリジェンス義務など項目ごとに適用時期が分かれていますが、バッテリーパスポートについては2027年2月18日以降に上市されるバッテリーへ一律に適用されます。対応の遅れは市場参入そのものを危うくします。

    ESG評価の低下とサプライチェーンからの排除懸念

    昨今、環境負荷削減は企業の義務と見なす風潮にあります。環境情報の開示が当たり前になる中、対応の遅れはESG評価にも直結します。

    • 投資家からの評価低下(ESG投資対象から除外)
    • 取引先からの調達先変更リスク(グローバル企業はサプライチェーン全体のCO₂可視化を進めている)
    • ブランドイメージの毀損
    Toyota - Sustanability Data Book

    出典:Toyota – Sustanability Data Book

    特にAppleやToyotaなど大手企業になるほど、サプライチェーンへの要請はシビアです。サプライチェーン全体でのCO₂排出ゼロを目標に掲げており、バッテリーパスポート未対応のサプライヤーは取引継続が困難になる可能性があります。

    参考:Apple – Environment

    参考:Toyota – バリューチェーン連携

    バッテリーパスポートの今後の展望と他業界への広がり

    バッテリーパスポートは電池分野だけで終わる仕組みではありません。義務化には至らないものの米国や中国でも、カーボンフットプリントやトレーサビリティへの需要は高まっています。とりわけ、グローバル大手においては自発的な情報開示が進んでいるのが特徴です。

    各国の制度整備や、企業の導入事例をここで確認しておきましょう。

    米国・中国・日本の動向と最新トレンド

    現在はEUが世界をリードしていますが、他の主要国でも類似制度の検討が進んでいます。

    国・地域動向
    アメリカ連邦のEV税額控除は2025年9月末で終了。一方、州レベル(カリフォルニア州等)や連邦調達では、製品のカーボンフットプリント申告を求める動きが継続 
    中国世界最大のEV市場。バッテリーリサイクル義務やトレーサビリティ制度を既に一部導入済み
    日本国内では、蓄電池を先行ユースケースとして、トレーサビリティ管理や企業間データ連携基盤の構築・実証、社会実装が進行中

    EUに輸出しない企業でも、いずれは各国の類似制度への対応が求められると見ておくべきでしょう。

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    テスラやボルボなど先進グローバル企業の導入事例

    先進企業は、規制を「先取りした競争優位性」 と捉え、既にバッテリー情報の可視化やトレーサビリティ強化に取り組んでいます。

    • テスラ:自社のバッテリーサプライチェーン全体のカーボンフットプリントを公開
    • ボルボ:新型モデルのCO₂排出量をライフサイクルベースで開示することを表明。あわせて1台あたりのライフサイクルCO₂を2018年比で2025年までに40%削減する目標を掲げる
    • BMW:ブロックチェーンを活用したバッテリートレーサビリティのパイロット実証を完了

    これらの企業に共通するのは、規制対応を「コスト」ではなく「成長戦略」 と捉えている点です。積極的な開示によって、企業価値の向上が期待できるという考え方に基づいています。

    参考:https://www.tesla.com/impact

    電池の次に広がる「製品パスポート」の可能性

    バッテリーパスポートは、あくまでDPP(デジタルプロダクトパスポート)の先行事例です。EUでは既に以下の製品カテゴリーへの拡大が検討されています。

    • 繊維製品(衣料品・ファッション)
    • 電子機器(スマホ・家電)
    • 建設資材
    • プラスチック製品

    つまり、バッテリー対応は「終わり」ではなく「始まり」 です。今後はあらゆる製品に同様のデジタル証明書が求められる時代が訪れると予想されます。

    人材系など他分野(履歴書や職歴の第三者証明)への応用展望

    バッテリーパスポートの導入を皮切りに、全く異なる分野においてもパスポート制の証明書の提示が可能だとする声も聞かれています。

    開発者の視点:XTELA JAPAN代表取締役 小幡拓弥 
    電池の次に広がる仕組みとして、人材系(履歴書・職歴の第三者証明や個人情報を守った条件マッチング)への応用が期待されます。

    この考え方は、「デジタル証明書の真贋性や不変性」 をまったく別のドメインに適用する発想です。

    例えば、

    • 履歴書・職歴の第三者証明:経歴詐称を防ぎ、採用プロセスを効率化
    • 資格・スキルの検証:デジタル証明書で即時確認可能に
    • 個人情報を開示しない条件マッチング:ゼロ知識証明(ZKP)などの技術と組み合わせ、プライバシーを守りながら条件照合を実現

    バッテリーパスポートの中核となる「データの信頼性担保と管理・共有」 というノウハウは、人材領域だけでなく「証明」が必要なあらゆる分野に応用できる技術なのです。

    まとめ:コンプライアンス体制の確立が必要な初期段階にある

    バッテリーパスポートは、EU電池規則への対応だけでなく、サプライチェーン全体の透明化を実現する重要な仕組みです。2027年の義務化に向けて、日本でも早期での対応を促す動きが見られています。

    まずは対象製品の確認を行い、必要なデータ項目を整理することが第一歩です。その上で、サプライヤーとの情報連携ルールやアクセス権限の設計、クラウド基盤(またはブロックチェーン)の基盤整備を進める必要があります。

    さらに、長期運用を見据える場合は、データの信頼性を担保するコンプライアンス体制やガバナンスの構築が欠かせません。バッテリーパスポートは単なる規制対応ではなく、今後の競争力を左右する経営課題として打ち出すことが重要です。

    なお、XTELAはブロックチェーン開発からシステム連携、運用支援までをトータルでサポートするシステム開発会社です。規制対応を貴社の企業戦略の機会と捉え、パートナーとして的確な技術支援に取り組みます。ぜひ、お気軽にご相談ください。

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