DeFi垂直統合L1の戦略分析|Sonic・BerachainとEthereum/Solanaの根本的な違い

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DeFi垂直統合L1の戦略分析|Sonic・BerachainとEthereum/Solanaの根本的な違い
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    Sonic(旧Fantom)Berachainに代表される「垂直統合型L1」の台頭は、ブロックチェーン産業の長年の哲学「インフラとアプリの分離」を根本から問い直している。SonicのFee Monetization(FeeM)が開発者に最大90%の手数料を還元する仕組みと、BerachainのProof of Liquidityを軸に、L1選定基準の変化を解説する。

    1.「インフラは我々、dAppはサードパーティ」モデルの限界

    ブロックチェーン産業がその黎明期から信奉してきた設計哲学がある。「レイヤー1はあくまでインフラであり、その上に何を建てるかはサードパーティの開発者に委ねる」——いわゆる水平分業モデルだ。Ethereumはこの哲学の申し子と言える。プロトコルはEVMとコンセンサスを提供し、Uniswap、Aave、Compound、Curveといった独立プロジェクトがDeFiエコシステムを形成した。

    しかしこのモデルには、近年になって顕在化してきた構造的な問題がある:

    • ユーザー体験の分断: 複数プロトコルを横断する必要があり、UXが複雑化
    • 収益構造の非対称性: ネットワーク成長への最大の貢献者である開発者が、ネットワーク手数料収益から排除されている
    • エコシステムの質的管理の困難さ: L1がインフラのみを提供する以上、上位レイヤーの品質管理ができない

    こうした課題を背景に、2024年後半から2026年にかけて、まったく異なるアプローチを取るL1が注目を集め始めた。「垂直統合型L1」の台頭である。

    2. 垂直統合型L1の台頭 — Sonicの戦略とBerachainのコンセプト

    Sonicの大胆なアプローチ — Fantomから生まれ変わったL1

    SonicはFantom Foundationが2024年8月に「Sonic Labs」へリブランド、2024年12月18日にメインネットを正式ローンチしたEVM互換L1だ。旧Fantom Operaネットワークを全面刷新し、「最速のEVM L1」を標榜している。

    主な技術スペック:

    • 10,000+ TPS、約720msのファイナリティ(CTOアンドレ・クロニエ氏が確認した検証済み数値)
    • 独自データベース「Carmen」によりバリデータのストレージ要件を最大90%削減(LiveDB/ArchiveDB分離設計)
    • FTM→S(Sonic)の1:1トークン移行

    Sonicの戦略的方向性は、技術仕様以上に注目される。同社はネイティブステーブルコイン「USSD」(Frax frxUSDインフラベース)を自社展開する一方、DEX(Shadow Exchange、BEETS)やレンディング(Silo Finance、Pendle)はサードパーティを「インセンティブで囲い込む」方針を取っている。完全な内製ではなく、FeeMによる「経済的な垂直統合」がSonicの本質だ。

    2024年12月のローンチから2025年5月に約$1.54BのTVL所載最高値を記録し、$1Bを66日で達成。Sui(505日)、Aptos(709日)と比較しても突出した立ち上がりだ。

    BerachainのProof of Liquidity

    BerachainはEVM完全互換のL1で、最大の特徴はProof of Liquidity(PoL)というコンセンサスメカニズムにある。よくある誤解だが、Berachainのバリデータ自体は$BERAをステークしてネットワークセキュリティを提供する(PoSベース)。流動性提供は「ユーザー」が$BGT(ガバナンストークン)を獲得し、それをバリデータにデリゲートして報酬をブーストする仕組みだ。つまりPoLは「セキュリティの源」ではなく「報酬・インセンティブ層」の革新と理解すべきである。

    Berachainの「ネイティブdApp」群(BEX = DEX、Bend = Morphoフォークのレンディング、Berps = パーペチュアル)は、技術的にはL1コンセンサス層ではなく「正式(canonical)dApp」として動作するが、PoL報酬システムと深く統合されている点が垂直統合性の特徴だ。

    3. Fee Monetization(FeeM)の革新性

    従来モデルの問題点

    Ethereumを含む多くのL1において、トランザクション手数料の分配先はバリデーター(マイナー)だ。dAppを開発しユーザーを獲得した開発者は、そのユーザーがトランザクションを発行するたびにネットワーク手数料を支払うが、その手数料は開発者には一切還元されない。ネットワーク成長への最大の貢献者である開発者が、ネットワーク手数料収益からは排除されているのが従来構造だ。

    SonicのFeeM — 手数料の最大90%を開発者へ

    SonicのFee Monetization(FeeM)は、この非対称性を覆す仕組みだ。基本構造は以下の通り:

    • 登録された対象dAppのトランザクション手数料の最大90%が開発者に還元される
    • 残りの一部がバリデータに、一部はバーンされる(最新のティア制では15-90%の幅で配分)
    • 開発者は登録(コントラクト所有権検証+25 Sの登録料、承認時に返金)が必要
    • オフチェーンオラクルが登録コントラクトのガス消費を監視し、品質基準への適合性を継続評価

    具体的なインパクトを考えると、月間10億円分のスワップを処理するDEXが、平均ガス代0.1%として月間100万円のガス費用を発生させる場合、最大90万円が開発者に還元される。これは従来モデルでは存在しなかった純粋な利用料ベースの収益モデルだ。

    4. 水平分業型L1との比較 — Ethereum・Solanaとの違い

    比較軸 Ethereum Solana Sonic(垂直統合型)
    dApp開発の自由度最大中(FeeM承認制)
    ユーザー体験の一貫性
    開発者の手数料収益なしなしあり(最大90%)
    エコシステム品質管理高(FeeM承認)
    検閲耐性
    スタートアップ参入障壁低〜中中〜高

    垂直統合型L1の最大の懸念は中立性の喪失だ。L1がコアサービスを推進する場合、そのサービスとサードパーティが競合関係に立つ可能性がある。AppleがApp Storeのルールを設定しながら自社アプリを競合させているという構図と本質的に同じであり、規制当局の視点からも注目される問題領域だ。

    一方でメリットも明確で、ユーザーにとって統合された体験はWeb2的な使いやすさに近づく。これは特にブロックチェーン初心者や一般ユーザーの獲得において大きなアドバンテージになりうる。

    5. 日本の開発者にとっての意味とビジネス機会

    機会 — FeeMによる持続可能な収益モデル

    日本市場では、ブロックチェーンスタートアップが独自トークンを発行することの規制的・法的コストが高い。金商法・資金決済法の文脈で、トークンの位置付けを慎重に整理しなければならず、これがWeb3スタートアップの参入障壁の一つになってきた。

    FeeMモデルは、トークン発行なしにdApp利用料ベースで収益化できる道を開く。「優れたプロダクトを作り、使ってもらった分だけ収益を得る」というシンプルなビジネスモデルは、規制環境が厳しい日本市場での展開においても理解しやすく、法的リスクも低く抑えられる可能性がある。

    FeeMを活かせるユースケース

    • 高頻度取引インフラ: アービトラージや自動再バランスを行うプロトコル
    • ゲーミング・NFTマーケットプレイス: 日本が強みを持つゲームIPとの連携
    • 決済アプリケーション: 日常的な少額決済を想定したB2Cアプリ
    • DeFiアグリゲーター: 複数プロトコルを束ねるメタプロトコル

    注意点 — プラットフォームリスクの集中

    垂直統合型L1でdApp開発を行う場合、最大のリスクはプラットフォームリスクの集中だ。L1がコアdAppを自社・準自社系列で運営している場合、そのdAppと直接競合するサービスを開発すると、不利な扱いを受ける可能性がある。FeeM承認の取り消しや、自社系列dAppとの統合の優先度付けなど、L1の裁量が大きい領域でのリスクは慎重に評価すべきだ。

    一方、補完的なポジションを取ることができれば、垂直統合型L1のエコシステムは大きなチャンスになりうる。L1の旗艦サービスが提供しないニッチな金融商品、特定業界向けの専門的なDeFiアプリ、旗艦サービスのUXを向上させるツール類などは、競合リスクが低い。

    6. 今後の展望 — 二極化するL1エコシステム

    短期予測(2026〜2027年) — 垂直統合型のさらなる台頭

    SonicのTVLは2024年12月のローンチ以降、わずか66日で$1Bに到達するなど急速な成長を遂げている。2026〜2027年にかけては、さらに複数の垂直統合型L1がローンチ、または既存L1が垂直統合戦略に転換すると予測される。FeeMのような開発者報酬モデルは、他のL1が追随する可能性も高い。

    中期予測(2027〜2030年) — 二極化するエコシステム

    L1エコシステムが二極化する可能性が高い:

    • Ethereum的な開放型エコシステム: 検閲耐性、許可不要性、最大の分散性を重視
    • 垂直統合型の統一体験エコシステム: CEX的な使いやすさをDeFiで実現

    SolanaのようなL1は中間ポジションを維持しようとするが、差別化の難しさに直面する可能性がある。

    垂直統合の本質的な問題 — 分散化との緊張関係

    長期的に最も重要な問いは「垂直統合型L1は本当に分散型と呼べるのか」だ。L1財団またはその関連団体がコアDeFiプロトコルを推進するということは、ネットワークの経済的中心に単一組織が位置することを意味する。これは技術的な分散性とは別に、経済的な権力の集中という問題をはらむ。証券規制・競争法の観点から、規制介入のリスクを高める可能性がある。

    筆者の見解としては、Sonicが採用する「FeeMで開発者を経済的に囲い込む」という設計は、純粋な内製化(DEXもレンディングも自社)よりも遥かに巧妙だ。表面的にはサードパーティ開発者の自由を保ちながら、実質的にはL1主導でエコシステム全体を一定方向にナビゲートできる。日本の開発者・企業にとっては、トークン発行なしで収益化できるFeeMの利便性は魅力的だが、特定L1への依存リスクを管理するためにマルチチェーン戦略を維持することが重要だ。

    まとめ

    本記事では、垂直統合型L1の台頭、特にSonicとBerachainの戦略を軸に、従来の水平分業型L1との根本的な違いを分析した。SonicのFeeMは開発者にネットワーク手数料の最大90%を還元する持続可能な収益モデルを提供し、BerachainのPoLはユーザーの流動性提供を報酬システムに組み込む独自の経済設計を実装している。日本の開発者にとっては、FeeMが規制環境に適合した収益化モデルになりうる一方、プラットフォームリスクへの注意が必要だ。DeFiの「自社開発回帰」は業界の成熟とともに避けられないトレンドかもしれず、用途に応じたプラットフォーム選択が今後ますます重要になる。

    本記事はXTELA JAPAN株式会社が作成しました。L1選定や垂直統合型L1上でのdApp開発に関するご相談は、無料技術相談はこちらからお問い合わせください。

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