不動産トークン化とは?セキュリティトークンの仕組み・メリット・日本の最新事例を解説
2026/05/21
2026/05/21
目次
不動産ビジネスの資金調達・流動化に、ブロックチェーン技術を活用する動きが日本でも本格化しています。
不動産トークン化(セキュリティトークン)は、大和証券・野村証券・ケネディクス(現・KDX)といった大手が実績を積み始めた一方、自社への導入可否を判断するには規制・技術・スキーム設計まで横断的な理解が必要です。
本記事では、事業者が社内検討・稟議に使える情報を体系的に解説します。
不動産トークン化とは
ブロックチェーン技術の進化により、不動産投資のあり方が根本から変わろうとしており、その中心にあるのが「トークン化」です。この仕組みを理解するには、「セキュリティトークン(ST)」「STO」「ブロックチェーン」の3要素を押さえる必要があります。本章では、定義とそれぞれの役割を順に整理します。
不動産トークン化の定義
不動産トークン化とは、現実の不動産資産をブロックチェーン上のデジタルトークンに変換し、所有権や収益権を細分化・流通させる仕組みです。
1棟数億円の物件でも、トークンに分割することで数万円単位からの参加が可能になります。これにより、これまで一部の投資家にしかアクセスできなかった不動産市場への門戸が広がります。

セキュリティトークン(ST)とは
セキュリティトークン(ST)とは、株式・社債・信託受益権などの有価証券をブロックチェーン上でデジタル化したものです。日本では信託受益権を裏付けとする発行が主流です。
ビットコインなどの暗号資産とは根本的に異なり、日本の金融商品取引法の規制対象に位置づけられます。
金融商品取引法第2条第3項では、同条第2項各号に掲げる権利(信託受益権・集団投資スキーム持分等のみなし有価証券)のうち、電子情報処理組織を用いて移転できる財産的価値に表示されるものを「電子記録移転権利」と定義し、第一項有価証券と同等の有価証券規制の対象としています。
出典:金融商品取引法 第2条第3項(e-Gov法令検索)
この法的裏付けにより、発行体には開示義務が課され、投資家保護の枠組みが適用されます。単なるデジタルデータではなく有価証券として扱われる点が、暗号資産との最大の違いです。

出典:日本STO協会
STOとは
STOはSecurity Token Offeringの略で、セキュリティトークンによる権利の発行・販売を指します。株式・社債におけるIPOや私募に相当する行為として位置づけられます。
ブロックチェーンとの関係
セキュリティトークンは、パブリックチェーン(Ethereumなど)またはプライベート・コンソーシアムチェーン上に発行されます。
スマートコントラクトが権利移転・収益分配・取引条件の自動執行を担うことで、仲介コストの削減と処理の透明化が実現します。チェーン上に記録されたデータは改ざんが極めて困難であり、投資家保護の観点からも信頼性が高いです。
不動産トークン化の仕組み
不動産トークン化の本質は、「権利の証券化」と「処理の自動化」を同時に実現する点にあります。発行までのプロセスを支えるのが法務・技術両面のスキーム設計であり、発行後の運用を支えるのがスマートコントラクトです。本章ではこの2軸から仕組みを解説します。
不動産→デジタル証券(ST)への変換プロセス
不動産をセキュリティトークン化する流れは、大きく5つのステップで進みます。
- 権利の特定:発行体(不動産会社・SPC)が対象物件の所有権・賃料収益権・受益権のどれをトークン化するか決定します
- 法務・税務設計:金商法上の開示義務、投資家保護規制への対応を弁護士・税理士と協議します
- スマートコントラクトの作成:トークンの発行数・配当ロジック・譲渡制限(KYC済み投資家のみ保有可など)をコードに実装します
- STO(販売):第一種金融商品取引業者を通じて適格投資家または一般投資家に販売します
- 収益分配と管理:賃料収入などをスマートコントラクト経由でトークンホルダーに自動分配します
SPC(Special Purpose Company/特別目的会社):対象物件を保有するためだけに設立する会社。元の会社が倒産しても投資家への影響を遮断する「倒産隔離」の役割を担います。

スマートコントラクトの役割
スマートコントラクトとは、「条件を満たしたら自動的に動く契約プログラム」のことです。たとえば「毎月末に賃料収入の〇%をトークンホルダーへ送金する」という条件をコードに書き込んでおけば、担当者が手動で操作しなくても処理が走ります。
不動産セキュリティトークン(ST)では主に以下の3つの場面で機能します。
- 自動配当:毎月の賃料収入を、事前に設定した比率でトークンホルダー全員に自動送金します。従来は担当者が計算・振込を手作業でこなしていた業務が、完全に自動化されます。
- ホワイトリスト管理:KYC(本人確認)を通過した投資家のみがトークンを保有・譲渡できるよう、技術的に制限します。未確認の第三者への譲渡はシステム上受け付けないため、規制対応を人手に頼らず担保できます。
- 取引履歴の記録:すべての取引がブロックチェーン上に自動で記録され、後から改ざんできません。監査や開示対応に必要な記録を別途作成する手間が省け、コンプライアンス対応のコスト削減につながります。
不動産STの市場規模と成長トレンド
日本のSTO市場は2020年の金商法改正を起点に立ち上がり、現在は大手金融機関が参入する黎明期にあります。国内規模・プレイヤー構造・海外比較の3点から現状を整理します。
国内市場規模の推移と将来予測
日本のSTO市場は、2020年5月施行の金融商品取引法改正により制度的基盤が整備されたことを契機に、本格的に立ち上がりました。
以降、大和証券グループ・野村証券・ケネディクスなどの主要プレイヤーが参入し、不動産信託受益権(信託銀行に預けた不動産から生まれる賃料収益・売却益を受け取る権利)を裏付けとするデジタル証券の発行が進んでいます。
不動産STに限った累計発行総額は2025年5月末時点で1,600億円を超えており(大和証券調べ)、制度整備の進展・ブロックチェーン基盤の成熟・機関投資家の参入という3つの条件が揃うなかで成長を続けています。

出典:大和証券
主要プレイヤーの動向(発行体・販売会社・基盤提供者の三層構造)
不動産ST市場は、役割の異なる3つのプレイヤーで構成されています。
| 役割 | 主な担い手 |
| 発行体 | 不動産SPC・信託スキームなど、投資対象資産に係る権利を発行する主体 |
| 販売会社 | 第一種金融商品取引業者として、募集・私募の取扱いを担う証券会社(例:大和証券・野村証券など) |
| 基盤提供者 | ブロックチェーン基盤・トークン管理システム・カストディを提供する事業者(例:BOOSTRY、XTELAなど) |
特に基盤提供者の重要性が増しており、スマートコントラクト設計・チェーン選定・二次市場の構築を専門とする開発会社との連携が、STOの成否を左右する場面が増えています。

出典:日本STO協会
海外市場との比較
米国では2018年にAspen Digital(コロラド州のリゾートホテルをトークン化)が先行事例となり、その後RealT(住宅物件の小口化)など複数のプロジェクトが実績を積んでいます。
欧州でも不動産を含むRWA(実物資産のトークン化)が活発化しており、各国の証券規制に対応したSTOが増加傾向にあります。日本市場はグローバルと比較してまだ発展途上ですが、規制の明確さという点では一定の整備が進んでいます。

出典:rwa.xyz
不動産セキュリティトークンとREITの違い
両者の最大の違いは「透明性の担保方法」と「流動性」にあります。 不動産STはブロックチェーンによる透明性と権利設計の自由度、REITは上場による高い流動性が強みです。本章では比較表で違いを整理し、用途別の使い分けを示します。
比較表(流動性・最低投資額・リターン構造など)
REIT(不動産投資信託)とは、多数の投資家から資金を集めて複数の不動産を取得・運用し、その賃料収入や売却益を分配する投資商品です。東京証券取引所に上場しており、株式と同様にリアルタイムで売買できます。
不動産STとREITは「不動産を小口化して投資できる」という点では共通していますが、構造・流動性・リターンの仕組みに大きな違いがあります。
違いを整理すると以下の表のようになります。
| 比較項目 | 不動産ST | REIT |
| 最低投資額 | 数万円〜(発行体による) | 数万円〜(市場価格に依存) |
| 流動性 | 低い(二次市場が発展途上) | 高い(証券取引所でリアルタイム売買) |
| 投資対象 | 単一または少数の物件 | 複数物件に自動分散 |
| リターン構造 | 賃料収益+売却益(契約による) | 配当(導管性要件を満たすため、配当可能利益の90%超を分配) |
| 透明性 | 高い(ブロックチェーンで全記録) | 高い(法定開示義務あり)/ブロックチェーンによるリアルタイム検証は不可 |
| 規制根拠 | 金融商品取引法(電子記録移転権利) | 投資信託及び投資法人に関する法律 |
どちらが向いているか
流動性を最優先する場合はREITが現実的な選択肢です。上場REITは証券取引所でリアルタイムに売買でき、急な資金需要にも対応しやすいです。
一方、特定の物件に直接投資したい、あるいはブロックチェーンの透明性・自動化機能を活用した新しいスキームを構築したい発行体・投資家には、不動産STが適しています。
特に発行体サイドでは「自社物件のSTO」という形で資金調達手段の多様化につながる可能性があります。
なぜ今、注目されているのか
不動産STが今注目される最大の理由は、「課題」と「解決手段」が初めて噛み合うタイミングを迎えたことにあります。 従来の不動産投資が抱える参入障壁・流動性・情報格差という構造課題に対し、Web3技術の成熟と金商法改正がそろって解を提示できる状況が整いました。本章では両側面を整理します。
従来の不動産投資の問題点
従来の不動産投資には、3つの構造的な課題がありました。
- 参入障壁の高さ:区分マンション1室でも数百万円、一棟物件では数億円の資金が必要です。まとまった元手がなければ市場に参加できません。
- 流動性の低さ:売却には仲介業者を通じた数ヶ月のプロセスが伴います。急な資金需要に対応しにくい資産です。
- 情報の非対称性:物件の状態・取引履歴・収益実績を外部から正確に把握することが難しく、買い手と売り手の間に情報格差が生じやすいです。
不動産STはこれら3つの課題に対して、それぞれ小口化・二次市場・ブロックチェーン記録という形で解決策を提示します。
Web3・DeFi普及と規制整備の背景
不動産STの普及は、Web3技術と規制や制度の両面が同時に進んだ結果です。
技術面では、Ethereumに代表されるブロックチェーンの普及により、スマートコントラクトを使った金融サービス(DeFi)が急速に広がりました。
金融取引をプログラムで自動化する仕組みが現実的になったことで、債券や不動産といった現実の資産(RWA)をデジタル上で扱う流れが自然に生まれてきました。
制度面では、前述のように金融商品取引法改正により、電子情報処理組織を用いて移転できる財産的価値が「電子記録移転権利」として法的に定義されました。これにより、当該権利は第一項有価証券と同等の流通・販売規制の対象となり、第一種金融商品取引業者がSTOを取り扱うための法的根拠が明確になりました。
不動産トークン化のメリット
不動産トークン化の主なメリットは「小口化」「流動性向上」「透明性」の3点です。発行体・投資家それぞれの視点から具体的に解説します。
小口化による参入障壁の低下
従来は数億円単位でしか取得できなかった優良物件でも、トークン化によって数万円から権利を取得できるようになります。
発行体にとっては、これまでリーチできなかった個人投資家層へのアクセスが可能になり、資金調達の選択肢が広がります。
流動性の向上
不動産は「売りたいときにすぐ売れない」資産の代表格です。セキュリティトークンは、二次市場(DEXまたは許可型取引所)での売買が設計上可能なため、従来の不動産売却プロセスと比べて流動性を高める余地があります。
ただし、国内の二次市場はまだ発展途上にあり、実際の流動性は発行規模や市場参加者数に左右される点は留意が必要です。
透明性・改ざん耐性
すべての取引履歴・収益分配がブロックチェーン上に記録されるため、第三者による検証が容易になります。発行体・投資家双方にとって、情報の非対称性が解消されます。
また、ブロックチェーンの特性上、一度記録されたデータの改ざんは極めて困難であり、不正リスクの低減にもつながります。
不動産トークン化のリスク・デメリット
導入を検討するうえで見落とせないリスクは、元本割れ・規制対応・スマートコントラクトの脆弱性の3つです。それぞれの内容と対策を整理します。
元本割れ・流動性リスク
不動産STは元本が保証された金融商品ではありません。対象物件の価格下落・空室率の上昇・自然災害による物件価値の毀損が生じた場合、投資元本を下回る可能性があります。
また、前述のように二次市場が未発達な現状では、売却したいタイミングで買い手が見つからないケースも起こりえます。投資判断の前に、対象物件の収益構造・立地・担保設定の有無を確認することが重要です。
法規制・グレーゾーンへの対応
日本国内では金融商品取引法のもとでデジタル証券の発行・販売に一定の枠組みが整っていますが、クロスボーダー取引やDeFiプロトコルを経由した流通については、規制上の取り扱いを事前に確認する必要がある場面があります。
海外でのローンチを検討する場合は、対象国の証券規制・AML規制・税務上の取り扱いを現地の専門家と確認することが求められます。規制は各国・各タイミングで変化するため、最新情報の把握を継続的に行う体制が不可欠です。
スマートコントラクトの脆弱性
スマートコントラクトはコードで記述されたプログラムであり、設計上の欠陥やバグが資金流出につながるリスクをはらんでいます。2016年のThe DAO事件をはじめ、スマートコントラクトの脆弱性を突いた攻撃による被害は実例として報告されています。
デプロイ前の第三者監査(セキュリティオーディット)の実施と、アップグレード可能なコントラクト設計の採用が、リスク軽減の基本的な対策となります。
日本における現状と事例
日本では2020年の金商法改正を機に、大和証券・野村証券・ケネディクスなど大手が実績を積み上げています。制度の概要と主要な事例を確認します。
金融商品取引法改正(2020年)とSTOの制度
2019年5月に成立した改正金融商品取引法(施行2020年5月)は、電子情報処理組織を用いて移転できる財産的価値に表示される権利を「電子記録移転権利」として定義し、既存の有価証券規制の枠組みに取り込みました。
これにより、第一種金融商品取引業者がSTOを実施するための法的根拠が明確になりました。発行体は目論見書等の開示義務、販売会社は適合性原則に基づく顧客管理義務を負います。
大和証券・野村証券・ケネディクスの事例
大和証券グループは2020年の金商法改正後、不動産信託受益権を裏付けとするデジタル証券(ST)の発行・引受に早期から取り組んできた主要プレイヤーの一つです。
私募形式でのSTOを通じて機関投資家向けに資金調達の場を提供しており、国内証券会社の不動産ST引受実績ではトップクラスの実績を持ちます。
野村證券は、親会社の野村HDとNRIが共同設立した合弁会社BOOSTRYが提供するブロックチェーン基盤「ibet for Fin」を活用し、複数の不動産・社債型STを発行しています。
ケネディクスは、2021年8月に日本初となる公募型不動産STを発行したパイオニアです。
個人投資家向けに小口から投資できる仕組みを確立し、その後もオフィスビル・物流施設を対象とした複数のSTO案件を積み上げています。
その他国内プラットフォーム(SBI・LIFULLなど)
SBI証券はデジタル証券の販売・管理プラットフォームの整備を進めており、複数のSTOに販売会社として関与しています。
LIFULLはブロックチェーンを活用した不動産情報の真正性担保に関する実証実験を行っており、不動産データの透明化という別角度からのアプローチを取っています。
海外の不動産トークン化事例
海外ではRealT・Propy・Aspen Digitalが先行事例として知られており、XTELAも海外案件で独自の技術選定を行っています。各事例から技術的・事業的な示唆を読み取ります。
RealT・Propy・Aspen Digitalなどの実績
RealTは不動産STの先進事例として広く知られています。主にデトロイトを中心とする米国の住宅物件をERC20トークンで小口化し、世界中の投資家に販売しています。
トークンホルダーはUSDC(ステーブルコイン)で毎週の賃料収益を受け取る仕組みで、数十億円規模の物件をトークン化した実績があります。EthereumおよびそのEVM互換サイドチェーンであるGnosis Chain(旧xDai)などを活用しており、Uniswapなどの分散型取引所でのトークン売買も可能な設計になっています。
Propyはブロックチェーンを活用した不動産取引の自動化に特化したプラットフォームです。売買契約から決済までのプロセスをスマートコントラクトで実行し、エスクローの透明化と手続きの効率化を実現しています。
米国を中心に実際の不動産取引でのブロックチェーン活用実績を持ちます。
Aspen Digitalはコロラド州のリゾートホテル「St. Regis Aspen Resort」の一部権利をセキュリティトークン化したプロジェクトで、米国SECの規制下でSTOを実施した先行事例として記録されています。
XTELA支援事例:ERC20採用とDEX二次市場の実現
XTELAが支援した海外不動産の小口化プラットフォーム開発事例は、技術選定の面で示唆に富む事例です。
不動産の小口化トークンには、複数種類のトークンを1つのコントラクトで管理できるERC1155が選択肢の一つとして挙げられます。ERC1155はFungibleトークンとNon-Fungibleトークンの両方を扱えるマルチトークン規格で、たとえば「物件AのトークンとBのトークンを同一コントラクトで管理する」といった使い方ができます。
一方で、グローバルの不動産ST案件ではERC20や、セキュリティトークン専用規格であるERC1400・ERC3643などが採用されるケースも多くあります。
しかしXTELAが支援したこの案件ではあえてERC20を採用しました。
目的は、公開されているDeFiの既存コード資産をそのまま流用して、二次市場(取引プラットフォーム)まで一体で構築するためです。
ERC20は、後述するDEXとの親和性が高いトークン規格です。この選択により、追加開発コストを大きく抑えながら流動性のある取引の場を立ち上げることができました。
取引の場として採用したのは、AMM型のDEX(分散型取引所)です。DEXとは、特定の管理者を置かずにスマートコントラクトで売買を自動処理する取引所のこと。
その中でもAMM(Automated Market Maker)型は、売り手と買い手を直接マッチングする代わりに、流動性プール内の各トークンの数量比(Uniswap V2なら定数積公式 x*y=k など)に基づいてアルゴリズムが自動で価格を決定する仕組みです。
Uniswapがその代表例として知られています。このDEXはソースコードが公開されているOSS(オープンソースソフトウェア)として提供されており、XTELAはこれを活用して独自UIを乗せた取引プラットフォームをゼロから開発せずに立ち上げることができました。
独自チェーンによるエコシステム設計と海外ローンチの判断
XTELAはこのプラットフォームをクライアントの独自チェーン上に構築しており、データ保持と手数料収入を自社経済圏に維持する設計としています。
DEXで発生する取引手数料がプラットフォーム内に蓄積される仕組みにより、外部エコシステムへの依存を最小化しながら収益基盤を確保しています。
さらにXTELAは、トークンホルダー向けのステーキング機能と各種インセンティブも同一プラットフォーム内に設計しました。
クライアントがローンチ先を海外としたのは、日本の法規制との整合性をXTELAと検討した結果、明確に確認できなかった点を踏まえた判断です。
国内で不動産STを展開する際は、金融商品取引法上の電子記録移転権利としての取り扱いや、第一種金融商品取引業者との連携が必要になるケースがあるため、事前に専門家と確認することが求められます。
規制対応の見通しが立つ前に海外でプロダクトを先行検証するというアプローチは、事業者が現実的に直面する選択肢の一つです。
自社で不動産トークン化を導入する際の検討ポイント
自社導入を検討する際は、スキーム類型・チェーン選定・トークン規格・体制構築の4点を事前に整理することが出発点になります。各項目の判断基準を解説します。
想定されるスキーム類型(自社発行型/プラットフォーム利用型/海外ローンチ型)
不動産STの導入にあたっては、まず自社がどのスキームで進めるかを明確にする必要があります。
自社発行型は、発行体が第一種金融商品取引業の登録を受け、自社で設計・発行・管理までを担うモデルです。自由度が高い反面、ライセンス取得・コンプライアンス体制の構築・システム開発にかかるコストと期間が大きくなります。
プラットフォーム利用型は、BOOSTRYやSBIのような既存のデジタル証券プラットフォームを活用するモデルです。初期投資を抑えながら早期のSTO実現が可能な点が利点で、大手金融機関との連携事例が多いです。
海外ローンチ型は、国内規制への対応が複雑な場合に海外市場を先行させる選択肢です。前述のXTELA事例のように、法規制の整備が進む前に海外でプロダクトを検証するアプローチとして有効ですが、対象国ごとの規制確認が別途必要になります。
技術選定の論点(パブリック/プライベート/コンソーシアム型)
チェーンの選定は、透明性・コスト・コントロールのバランスで決まります。
パブリックチェーン(Ethereum等)は透明性と相互運用性が高く、既存のDeFiインフラを活用できます。ただし、ガス代コストの変動とスケーラビリティが課題になることがあります。
プライベートチェーンはアクセスを管理者が制御できるため、機密性の高い取引に向いています。一方、分散性が低いため外部からの信頼性が担保しにくい面があります。
コンソーシアムチェーンは複数の信頼できる参加者が共同で管理するモデルで、規制対応と技術的信頼性のバランスが取れます。日本の金融機関が活用しているBOOSTRYもこの形態に近いです。
トークン規格の選定(ERC1155 vs ERC20、用途に応じた使い分け)
トークン規格の選択は、二次市場での取引設計に直結する重要な意思決定です。
ERC1155は1つのスマートコントラクトで複数種類のトークンを管理できます。権利の種類が複雑な案件(収益権・議決権・優先分配権など)の管理に向いています。
ERC20は単一種類のトークンを発行する規格で、UniswapなどのDEXとの親和性が高いです。既存のDeFiエコシステムを流通手段として活用したい場合に有利で、XTELAの海外不動産案件でも採用された規格です。
二次市場での流動性を重視するならERC20、権利構造の複雑さを優先するならERC1155が基本的な使い分けの基準となります。
| 比較項目 | ERC20 | ERC1155 |
| トークンの種類 | 単一 | 複数(1コントラクトで管理) |
| 権利設計の複雑さ | シンプル(1種類) | 複雑(収益権・議決権・優先分配権など) |
| DEX・DeFiとの親和性 | 高い(Uniswapなど既存インフラを流用可) | 低い(追加実装が必要) |
| 二次市場の流動性 | 高い | 低い |
| 開発コスト | 低い(OSSコード資産を活用しやすい) | 高い(独自実装が増える) |
| 向いているケース | 流動性重視・単一物件の小口化 | 複数物件・複雑な権利構造の管理 |
必要となる体制・パートナー(法務・技術・カストディ・販売チャネル)
不動産STの発行は、法務・技術・資産管理・販売という4つの専門領域が連動して初めて成立します。どれか一つが欠けても、発行停止・規制違反・資金流出のリスクが生じます。
- 法務:金商法上の開示義務・適合性原則への対応を担います。海外ローンチの場合は現地の証券規制・AML規制の確認も必要で、弁護士・法務アドバイザーとの連携が前提になります。
- 技術:スマートコントラクトの設計・開発から第三者セキュリティ監査・チェーン選定・インフラ構築まで一気通貫で担える開発パートナーが必要です。監査なしのデプロイは資金流出リスクに直結します。
- カストディ:発行したデジタル証券の秘密鍵管理を担う専門業者です。自社管理は紛失・流出リスクが高く、機関投資家向け案件では専門カストディアンの利用が事実上の要件になります。
- 販売チャネル:国内での一般投資家向け販売には、第一種金融商品取引業者との連携が法的に必要です。適切な販売会社の選定が、投資家属性と調達規模の両方を左右します。

今後の展望と課題
二次市場の流動性課題に対しては、許可型DEXや専門取引所の整備が進むことで段階的な解消が見込まれます。
グローバルでは機関投資家主導のRWA市場が急拡大しており、不動産はその中心的な対象資産として位置づけられています。
日本でも規制の明確化・市場参加者の増加・技術コストの低下という3条件が揃いつつあり、今後5年が市場形成の正念場です。
健全な市場発展には、投資家リテラシーの向上と規制のアップデートに継続的に対応できる仕組みづくりが前提条件となります。
まとめ
不動産トークン化は、小口化・流動性向上・透明性という3つの観点から、従来の不動産投資の構造を変える可能性を持つ技術です。
日本でも2020年の金融商品取引法改正を起点に大和証券・野村証券・ケネディクスが実績を積み上げており、制度面での基盤は整ってきました。
自社への導入を検討する際は、スキーム設計・チェーン・トークン規格・体制の4点を整理したうえで、ブロックチェーン開発の専門会社に相談することが現実的な第一歩となります。