Grass(GRASS)徹底解説 2026|ブラウザ拡張のAIデータDePINとアンロック後の需給
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- DePIN
- — Decentralized Physical Infrastructure Networks。物理デバイス・データを分散提供者がトークン報酬で運営するインフラ。
- ゼロフリクション参加
- — 専用ハードウェア・追加操作なしで参加できる設計。Grass はブラウザ拡張インストールのみで参加可能。
- ユーザー数
- — Grass 公式サイトは「850万人超のユーザー」と表記(月間アクティブかどうかは明示なし)。DePIN の中でも参加者の桁が大きい。
- Web スクレイピング
- — 公開 Web ページから自動的にデータを収集する手法。Grass はユーザーの帯域を借りて実行。
- 181M GRASS アンロック
- — 2025 年 10 月 28 日に実施された大量アンロック(TGE から 1 年のクリフ)。流通供給が約 +58% 増えた。
- DataDAO
- — Vana が中核に据える、ユーザーが自分のデータを能動的に提供する分散自治組織。Grass の受動的収集と対比される。
- GRASS
- — Grass のネイティブトークン。Solana SPL 規格。
- 通信の秘密
- — 日本の電気通信事業法第 4 条等で保護される通信内容のプライバシー。Web スクレイピングと規制接点になる領域。
2026年4月24日:181M GRASS アンロックの時期を「2026年3月予定」から「2025年10月28日実施済み」に訂正。
2026年9月24日:アンロック後の値動き、2025年・2026年上半期の売上、Stage 2 報酬(USDC 配布)を公式発表・CoinGecko・Tokenomist で確かめて更新。
Grass(GRASS)は、「ブラウザ拡張をインストールするだけで参加できる」というゼロフリクション設計で、850万人超のユーザー(公式サイト表記)を集めたAI & Data DePINです。PCやスマホの未使用帯域をAI企業向けのWebデータ収集に使い、参加者に報酬を還元する仕組み。売上は2025年通年で約$17M、2026年上半期だけで約$17M(2025年上半期の約7倍)と公式に説明されており(出典: Grass 公式 2026年7月7日 Token Holder Call 要約)、AI&Data カテゴリで実収益規模の大きいプロジェクトです。
トークン面の大きな出来事は、2025 年 10 月 28 日に実施された 181M GRASS の大量アンロック(流通供給 約 +58%)です。GRASS は 2025年10月1日の約$0.77から、アンロック直前の10月27日に約$0.44、11月5日に約$0.29まで下がり、その後2026年は概ね$0.28〜$0.49の範囲で推移しました(2026年9月24日時点 約$0.43、CoinGecko)。DePIN完全マップ 2026のスコアリングでは16点と評価しています。
本記事では、Grass を「AI データ DePIN の成功例」として紹介するのではなく、「参加者規模と売上は大きい一方、2025年10月の 181M GRASS アンロック(流通供給+58%)でトークン価格が大きく下げた、事業とトークン経済の乖離事例」として構造分析します。ブラウザ拡張参加モデルの経済的意義、Vanaとの「受動的 vs 能動的」軸での競合、Webスクレイピングの法的グレー、そして日本企業の活用機会と慎重な採用姿勢の必要性を、2026年9月24日時点で確認できる情報から解説します。
Grassのひと言定義: 850万人超のユーザーと、2026年上半期だけで約$17Mの売上という大きな事業規模を持つ一方、2025 年 10 月 28 日の 181M GRASS アンロック(+58%)の前後で価格が大きく下げた、「事業vsトークン」乖離の典型例。
⚠ 2025年10月28日アンロックの結果(実績)
181M GRASS のアンロックで、流通供給が一度に約58%増えました。価格は10月1日の約$0.77から11月5日の約$0.29へ、約6割下げました(下落はアンロック前から始まっていた点に注意)。2026年9月24日時点の流通供給は約6.77億 GRASS(総供給10億)、価格は約$0.43で、2024年11月の最高値$3.89からは約9割低い水準です(CoinGecko、Tokenomist)。残る約3.2億枚のロック分は2028年までの解除予定とされています。事業採用と投資判断を分けて評価すべき典型例です。
目次
- Grass とは — ブラウザ拡張型 AI データ DePIN
- 主要指標(2026年9月24日時点)
- 事業モデル — 4つのサービス要素
- 2025年10月28日アンロック後に何が起きたか・今後の解除予定
- Vana との「受動的 vs 能動的」軸での棲み分け
- 直面している5つの構造的課題
- 日本市場への含意
- FAQ
1. Grass とは — ブラウザ拡張型 AI データ DePIN
Grass は Wynd Labs が開発し、2023-2024年にローンチされたAI & Data DePIN です。最大の差別化は「究極のゼロフリクション参加」——Chrome/Firefox 拡張をインストールするだけで、PCのアイドル時の未使用帯域が自動的にGrass ネットワークに提供されます。ユーザーは追加の操作なく、GRASS トークン報酬を受領できます。
1-1. なぜ 850万人超のユーザーを集められたか
Grass 公式サイトの「850万人超のユーザー」は、専用機器を買う必要がある DePIN(Helium・Hivemapper・WeatherXM など)と比べると参加者の桁が違います。ただし機器の台数・加入者数とユーザー数は単位が違うため、単純な倍率の比較はできません。なお、2026年7月の公式説明では、Stage 2 期間のネットワーク通信の約9割を上位15万人ほどのユーザーが担っていたとされています(公式)。
この規模を達成できた理由は「参加の限界コストがほぼゼロ」という設計にあります:
- ハードウェア購入不要(スマホ・PCがあれば十分)
- 追加ソフトウェアインストール(ブラウザ拡張・デスクトップアプリ・モバイルアプリ)のみ
- 日常のブラウジング中に自動収益化
- 電力コスト増加ほぼなし(既にPC起動中)
これがDePIN 業界で「暗号資産の認知度×ゼロフリクション」という魔法の組み合わせを実現した希少な事例です。
1-2. 基本情報
- 公式サイト: grass.io
- 開発元: Wynd Labs
- ネイティブトークン: GRASS
- ベースチェーン: Solana
- TGE: 2024年10月
- 2025年10月28日 アンロック実施: 181M GRASS(流通供給+58%)
- 供給(2026年9月24日時点): 流通 約6.77億 / 総供給 10億 GRASS(CoinGecko)
- Stage 2 報酬: 2024年10月14日〜2026年6月8日の参加分を USDC で配布(GRASS の新規発行なし)。受け取り開始は2026年7月22日、期限は2027年1月22日(公式)
2. 主要指標(2026年9月24日時点)
売上は公式の2026年7月7日 Token Holder Call の要約による値です。同要約では、2025年は上半期$2.7M・下半期$14.3M、2026年通年は学習データだけで$65〜75Mの見込み(会社側の見通し)とされています(出典)。相場の目安:GRASS 約$0.43、時価総額 約$2.9億(CoinGecko、2026年9月24日時点)。
3. 事業モデル — 4つのサービス要素
Chrome/Firefox拡張をインストールするだけで、PCアイドル時の未使用帯域をGrassネットワークに提供。ユーザー側は追加操作なし、報酬だけ受領という究極のゼロフリクション設計。
集約した帯域を使い、Web全体(Amazon、Wikipedia、公的データベース等)から構造化・非構造化データを収集。AI企業・ヘッジファンド・市場調査会社向けに販売。
2025年以降、Webデータ収集に加えAI推論リクエストのルーティング層としても機能。Grass ノードがAIモデル出力の配信経由点として機能する新機能。
ノード稼働時間・提供帯域・データ品質に応じて GRASS 報酬。ゼロフリクション参加で850万人超のユーザーを集めた。Stage 2 の報酬は GRASS ではなく USDC で配られた。
4. 2025年10月28日アンロック後に何が起きたか・今後の解除予定
2025年10月28日に実施された 181M GRASS アンロックは、既存流通供給の+58%相当でした。GRASS の価格(CoinGecko 日次)は、2025年10月1日 約$0.77 → 10月27日 約$0.44 → 10月29日 約$0.38 → 11月5日 約$0.29 と下げ、その後2026年は概ね$0.28〜$0.49 の範囲で推移、2026年9月24日時点で約$0.43 です。
一方で事業側は、2026年上半期の売上が約$17M(前年同期の約7倍)と伸びています(公式説明)。事業の伸びとトークン価格が連動していないことが、アンロック後の約11か月で見えた事実です。
4-1. 今後の解除予定
Tokenomist によると、2026年9月24日時点で総供給10億 GRASS のうち約67.7%が流通しており、残る約32.3%(約3.2億枚)は2028年までの予定で解除されます(Tokenomist)。配分は貢献者22.0%、初期投資家25.2%、財団・エコシステム22.8%、将来のインセンティブ17.0%、Airdrop One 10.0%、Router 報酬3.0%。なお、Stage 2 の参加者報酬は GRASS ではなく USDC で配られ、流通供給は増えていません(公式)。
4-2. 事業ファンダメンタルズとトークン評価の乖離
Grass はDePIN完全マップ第7章「失敗パターン②:長期アンロック売り圧型」に該当します。事業が伸びていても:
- アンロックで増えた流通分が売り圧として働いた
- 残るロック分(約32%)の解除予定が意識され続ける
- 売上の伸びが価格に反映されにくい期間が続いた
この構造が、Grass のDePIN 完全マップ評価が 16点(20点台の Aethir・Bittensor より低い)に留まる理由です。事業的には本来20点超の実力があると言えます。
5. Vana との「受動的 vs 能動的」軸での棲み分け
| 軸 | Grass | Vana |
|---|---|---|
| 参加モデル | 受動的(ブラウザ拡張) | 能動的(明示的DataDAO同意) |
| ユーザー数 | 8.5M+(公式サイト表記) | 不明(Data Point 12M、2026年4月時点) |
| 規制整合性 | 低(スクレイピンググレー) | 高(GDPR/個情法整合) |
| アンロックリスク | 2025/10 に181M GRASS(実施済み) | 4フェーズ設計で段階的 |
| DePINマップ | 16点 | 17点 |
Grass は「規模と収益規模」、Vana は「法的整合性と長期設計」——両者は事実上棲み分け関係にあります。AI 企業の使い分けは以下:
- 大量の汎用Web データ・低コスト重視 → Grass
- 法務リスク回避・GDPR/個情法厳格対応 → Vana
6. 直面している5つの構造的課題
2025年10月28日の 181M GRASS アンロック(流通供給+58%)の前後で価格は約6割下げ、2026年9月時点でも最高値の約1割の水準にとどまる。事業実績(2026年上半期の売上 約$17M)は伸びているが、残る約32%のロック分が2028年まで順次解除される予定で、供給側の重さは続く。
Grass のデータ収集は Web サイト運営者からの明示的な許可を得ていないケースが多く、米国の判例(hiQ Labs v. LinkedIn、第9巡回区控訴裁判所 2022年 等)でも、公開データの収集がどこまで許されるかは契約・利用規約との関係を含めて争いが続いている。EU GDPR、日本個人情報保護法・電気通信事業法「通信の秘密」との関係でも、規制強化のリスクを常に抱える。
Vanaが「同意ベースのDataDAO」でGDPR/個人情報保護法に整合する方向で、Grass の「受動的収集」は規制強化時に構造的に劣勢になる可能性。2026-2028年に規制が強化されれば Vana の相対優位が高まる。
OpenAI・Google・Meta 等の巨大AI企業は既に自社で巨大データを保有し、Common Crawl等の既存オープンデータも活用。Grass の新規データ供給への支払い意欲は限定的で、価格競争が厳しい。
月$5-20程度の報酬は、ブラウザ拡張入れるだけで「おまけ」として許容される水準だが、トークン価格下落時にはマイナス効果(電力コスト等)が経済合理性を覆す可能性。実質時給数円程度の感覚で、ユーザーの継続参加動機は薄い。
7. 日本市場への含意
7-1. 国産LLM・AIベンチャーの活用
ELYZA・PKSHAなどの企業や、Swallow を開発する研究機関など国産LLMの開発者にとって、Grass の大規模Webデータは「日本語テキストの学習データ補完」として活用できる可能性があります。ただし著作権法第30条の4(AI学習利用)の解釈、電気通信事業法「通信の秘密」との関係で、規制動向リサーチが必須です。
7-2. 日本居住者のGrass参加の経済性
日本の光回線・高速PC環境はGrass参加に有利な条件ですが、報酬は典型的に月$5-20程度。経済合理性というより「おまけの副収入」「暗号資産体験」としての意味合いが強い。日本居住者向けの配布・換金には国内法上の論点があり、弁護士への確認が前提になる。2026年7月15日成立・7月23日公布の改正金融商品取引法で暗号資産は金商法の対象に移る(施行は公布から1年以内)点も踏まえる必要がある。
7-3. 難所
- 電気通信事業法「通信の秘密」との関係整理
- 個人情報保護法の同意要件
- 著作権法30条の4の解釈
- 残りのロック分(約32%、2028年まで)の解除予定を踏まえた評価
FAQ
Q1. Grass に参加すべきですか?
A. ブラウザ拡張インストールのゼロフリクション参加なら「おまけの副収入」として許容。ただしプライバシー意識が高い人は、Grass が使用する帯域の用途(AI学習データ収集)に抵抗感を感じる可能性があります。Vanaのような能動的同意モデルとの比較も有効。
Q2. 2025 年 10 月のアンロックの後、GRASS はどう動きましたか?
A. CoinGecko の日次価格では、2025年10月1日の約$0.77から11月5日の約$0.29まで下げ、その後2026年は概ね$0.28〜$0.49 で推移、2026年9月24日時点は約$0.43 です。下落はアンロック前から始まっていました。今後の値動きは予測できないため、残りのロック分の解除予定(2028年まで)と売上の開示を合わせて確認してください。
Q3. Vana と Grass どちらを使うべきですか?
A. AI企業のデータ購入先としては、法務重視なら Vana、コスト・規模重視なら Grass。データ提供者としての参加は、プライバシー意識・規制意識が高いなら Vana、ゼロフリクション重視なら Grass。
関連記事・まとめ
- Vana — 対照的な能動的同意モデル
- Masa — Bittensor Subnet運営
- Bittensor — AI&Data 上流
- DePIN完全マップ 2026
参考リンク
- Grass公式: grass.io
- Grass 公式 — July 7 Token Holder and Network Participant Call 要約: grass.io/learn
- Grass 公式 — Stage 2 Rewards Allocation: grass.io/learn
- Tokenomist — Grass: tokenomist.ai/grass
- CoinGecko — Grass: coingecko.com
- hiQ Labs v. LinkedIn(第9巡回区控訴裁判所、2022年4月18日): 判決文PDF
※本記事は2026年4月24日時点の公開情報をもとに、2026年9月24日にアンロック後の値動き・供給・売上・Stage 2 報酬を一次資料で確かめて更新しました(最終確認日:2026年9月24日)。